【セルジオ越後】「降格なし」で本当に良かったのか? 号泣する鹿島の選手や相模原の昇格ドラマに感じたのは…

2020年12月21日 サッカーダイジェストWeb編集部

やはり何かが懸かっているスリリングな勝負は見るほうも引き込まれる

最終節でACL出場の可能性を残したのはC大阪。鹿島は、終盤の怒涛の猛攻も及ばなかった。写真:滝川敏之

 Jリーグは19日・20日に最終節が行なわれて、2020年シーズンのリーグ戦が幕を閉じた。新型コロナウイルスに振り回された1年は当初、全日程をこなせるかどうかも危ぶまれて、全体の75パーセントの試合を開催できればシーズン成立という条件が付けられていたけど、なんとか全日程を終了することができた。

 集団感染が発生したチームがあり、前例のない過密スケジュール、連戦も乗り越えてきた。それだけに、選手たちは本当によく"耐えた"と思うし、同時に負傷者もかなり目立ったシーズンだったね。とくにACL本選に出場したチームは、他の出場しないチームよりも過酷なスケジュールが組まれて、満身創痍の状態で大会に臨んだ。3チームともグループステージを突破したのは見事だったけど、結局勝ち抜くことはできず、イニエスタやディエゴ・オリヴェイラがひどい怪我を負って帰ってきたのは今シーズンの流れを象徴しているかのようだったよ。

 J1では川崎が独走で優勝した一方で、中だるみのような時期が長かったのも否めなかった。その原因の一端は、やはり「降格なし」とした大会方式の変更にあったと思うんだ。最終節の試合を見ていたら、改めてそんな思いを強くしたよ。鹿島は、セレッソとのホーム最終戦で引き分けて、ACL出場権を獲得する可能性が完全に消滅して選手たちは泣いていたし、J3では最終節での大逆転で相模原が昇格を決めるドラマがあったよね。

 やっぱり何かが懸かっているスリリングな勝負は戦っている選手たちにとって何よりも大きな経験となるし、見るほうも引き込まれるものだ。こういう試合を重ねて競争力を上げていかなければ、日本のサッカーはレベルアップしていかないんだ。

 とはいえ、来年のJ1は20チームに増えて、夏から秋にかけては、東京五輪やワールドカップアジア最終予選などもある。今年以上に選手たちにとっては厳しいスケジュールとなるかもしれないね。そうした中で、交代枠はまた3人に戻るようだし、降格も4チームになる。それなりに戦力を充実させて新シーズンに臨みたいのはどこも同じだろうけど、日本経済が大打撃を受けている中で、オフの補強もそこまで多くは望めないんじゃないかな。

 そうなると、Jリーグは真新しさのないキャスティングで、またどんぐりの背比べをしながら過密スケジュールを戦うことになる。川崎がACLに出場して今季のような強さを発揮できるのかはひとつの見どころになると思うけど、前年王者以外にも新たに話題を提供してくれるチームや、あるいは選手が出てこなければ、魅力に乏しいリーグになってしまう。競争力とスリルに満ちたリーグにしていくためにも、選手、クラブ、そしてJリーグ本部が危機感を持って来シーズンに臨んでほしいよ。
 

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