「世紀の金庫破り」でリーグ・アンの放映権は行方不明? ジャーナリストたちが真っ青になった前代未聞の事態とは【現地発】

2020年12月18日 結城麻里

放映権を獲得したはずのテレビ局が事実上破綻

リーグ・アンはこれまで15節が終了。年内は残り1節だ。 (C)Getty Images

「世紀の大強盗」――。

 12月12日、フランスのスポーツ全国紙『L’EQUIPE』の一面は、こんな大見出しを掲げ、ショッキングなスペイン製人気シリーズの強盗団仮面をずらりと並べた。

 フランス・リーグ放の映権を巨額で落札した『メディアプロ』(スペイン・中国資本)が契約を履行できないまま事実上破綻、鳴り物入りで立ち上げた新テレビ局『TELEFOOT』もたった半年で閉局することになり、フランス中に大きな怒りが広がっているためだ。

『メディアプロ』は2018年5月、年8億2860万ユーロ(約1035億7500万円)を4年間(2020-24年シーズン)支払うという売り込みで、リーグ・アンとリーグ・ドゥ(2部)の放映権料をいわば道場破り的に落札した。

 従来のテレビ局が「分け前」的に獲得した放映権と合わせると、フランス・リーグの放映権料は年11億6700万ユーロ(約1458億7500万円)に跳ね上がり、これを受領するフランスのプロフットボールリーグ連盟(LFP)とプロクラブは、降って沸いた夢の中で狂喜のダンスを踊っていた。
 
 次いで『メディアプロ』は、豪華キャストもハンティングして新テレビ局『TELEFOOT』を開設。民間テレビ局『TF1』の代表中継で人気のビセンテ・リザラズ&グレゴワール・マルゴットンのコンビもビッグマッチに起用することになり、多くのジャーナリストも合流。また2020年7月と8月の支払いも行ない、トラブルは絶えなかったが、船出した格好だった。

 ところが『メディアプロ』のジャウム・ロウレス会長は突然、『L’EQUIPE』紙上で今シーズンの年間契約金の値下げを要望。10月5日分(1億4360万ユーロ)の支払いを施行せず、12月5日分(1億2710万ユーロ)も払わなかった。

 これでLFPとただでさえ新型コロナウィルスによる収入減に喘いでいた各クラブはパニックに襲われ、ここにきて選手たちにまで不安が広がり始めている。

 この問題はナンテール商業裁判所に持ち込まれ、法的に任命された仲裁人、『メディアプロ』、ヴァンサン・ラブリュヌ新会長率いるLFPの3者が妥協点を探って交渉してきたが、最終的にLFPが『メディアプロ』と手を切る方向で合意した模様だ。
 

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