【バイタルエリアの仕事人】vol.1 遠藤保仁|稀代のゲームメーカーが“賢い”と唸る名手たち。なぜ彼らは輝けるのか?

2020年12月12日 長沼敏行(サッカーダイジェストWeb編集部)

「チームの特徴や考え方は、バイタルエリアへ到達するまでに、どう展開していくかというところに現われてくる」

チームや監督の考え方によってバイタルエリアへ持ち込む道のりも違ってくると遠藤は語る。写真:サッカーダイジェスト

 サッカーにおける攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝きを放つ選手たちのサッカー観に迫る新連載のインタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。記念すべき第1回は、日本を代表する司令塔、ジュビロ磐田の遠藤保仁だ。前編ではバイタルエリアでのプレーイメージやゴールを生み出す秘訣について語っているが、後編ではさらに、そのサッカー観について深く掘り下げていく。

 遠藤保仁といえば、歴代最多の通算152試合出場を誇る日本代表としての活躍もまだまだ記憶に新しい。国際舞台においてもバイタルエリアで眩い輝きを放ってきた遠藤だが、クラブと代表とでは自身のプレーに対する意識の違い、考え方の違いというものはあったのだろうか。そして、

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 代表でもクラブでも、監督が変われば考え方も変わるので、大事なのはそこに対してどうフィットさせるか。特に自分のプレーが大きく変わるということはありませんでした。ただ、多少変わるという点でいえば、前にも言ったように(※前編参照)バイタルエリアまでの持っていき方というのが変わるくらい。ゴールへ向かってダイレクトに速くいくのか、パスで組み立てながらゆっくり行くのか。

 あとはやっているメンバーによってやり方が変わることももちろんありますけど、だいたい代表に来るような選手は、対戦したり、テレビで見たりして、こういうプレーヤーだなというのを把握できるので、特に大きな問題なくやれますね。あまり、大きく自分が何かを変えるということはなかったと思います。

 代表にしろ、クラブにしろ、やっぱりチームの特徴や考え方というのは、バイタルエリアへ到達するまでに、どう展開していくかというところにも明確に現われてきます。重要なのは、やはりいかにいい状態でそこへ持ち込んでいけるか。

 それはチームによって全く違いますし、わかりやすく言えば、バルセロナのようにボールを保持しつつ相手を動かしながら、空いたスペースにどんどん入り込んでバイタルエリアに侵入していくやり方もあれば、逆に少し前のレアル・マドリーなどはより速く個人の能力でどんどん打開してバイタルエリアに入っていく。

 一概にどちらがいいとは言えませんし、そこは監督やクラブの考え方、哲学によって大きく変わりますね。よくサッカーを見るときに、ゴールを見たいという人もいると思いますけど……、バイタルエリアに対して、いかに相手にとって危険な場面を作り出してボールを運んでいけるかというのは、やっぱり僕みたいにボールをよく触って動かすようなポジションの選手の醍醐味なのかなとは思います。

 試合では常に最善の選択を心掛けていますね。試合の流れを読みながら、時には強引に行く時もあるし、パスで組み立てたりする。よりリスクを冒さなければいけない状況もありますけど、闇雲にバイタルエリアで仕掛けるのではなく、やはり周りの選手との共通理解が必要だし、自分ひとりで完結できる仕事ではない。コミュニケーションをとったり、パスにメッセージを込めたり……。やはりお互いの考えを伝え合うことは、これまで意識してやってきましたね。
 

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