【バイタルエリアの仕事人】vol.1 遠藤保仁|日本を代表する司令塔は攻守の重要局面で何を見ているのか?

2020年12月11日 長沼敏行(サッカーダイジェストWeb編集部)

「チームによって、バイタルエリアに入るまでの道のりも全然違います」

今季でプロ23年目を迎えた遠藤。自身が主戦場としてきた「バイタルエリア」について語ってくれた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 サッカーにおける攻守の重要局面となる「バイタルエリア」。ゴールや失点に直結する"勝負の肝"となるスペースをいかに攻略するか、死守するかは、多くのチームにとって不偏のテーマだろう。そんな「バイタルエリア」で輝きを放つ選手たちのサッカー観に迫る新連載のインタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。記念すべき第1回は、日本を代表する司令塔、ジュビロ磐田の遠藤保仁だ。

 遠藤にとってバイタルエリアは「なんでもできる場所」だそうだ。ゴールを奪うべく数ある手札の中から、より効果的なプレーを選択し、相手の守備を崩しにかかる――。そんなイメージだろうか。今年10月に長年慣れ親しんだ青黒のユニホームからサックスブルーのユニホームへ着替えることとなった稀代のゲームメーカーは、バイタルエリアにおいて一体どんなイメージを持ってプレーしているのだろうか。

――◆――◆――

サッカーは、プレーエリアによってプレーそのものに変化が生まれますし、気の持ちようも場所によって変わってくると思います。例えば、自分のゴールから遠ざかれば遠ざかるほど、リスクを冒したプレーも出せるようになる。だから、ミスしてもいいやと言ったら変ですけど、より大胆なプレーが相手のゴールに近づけば出しやすくなるし、逆に自分たちのゴール前では極力リスクを冒さずに、いかにしてそこを脱け出して今度は相手の嫌な所に入っていけるか。そういう局面がサッカーにはたくさんあります。

 もちろん、試合展開にも左右されます。負けている状況であれば、多少自分のゴールに近い位置でもリスクを冒してプレーすることもあるし、勝っている状況であれば、より相手に隙を与えないような堅実なプレーが求められるのはよくあること。なので、時間帯や対戦相手、自分たちが今置かれている状況によって、プレーの質というか、選択というのは当然変わっていきますね。

 もちろんチームによって、プレーの質や根本的な考え方も違う。長年所属していたガンバ大阪とジュビロ磐田でも違いますし、バイタルエリアに入るまでの道のりも全然違います。例えば、ガンバは攻撃的というイメージがあると思いますけど、最近は繋いで圧倒するというよりはハードワークをベースに、よりアグレッシブな闘いというか、奪ってより速くバイタルエリアに入っていくというスタイルになっています。

 逆にジュビロは、ボールを持って主導権を渡さないような戦い方をしている。どちらが正解かといったらどちらも正解だと思うんです。だけど、やっぱり監督の考え方とかチームの哲学によって、やり方は大きく違ってくるし、さらに時代が変わればサッカーの質も変わるということが言えるでしょうね。
 

次ページ「やっぱりバイタルエリアを攻略するには、いかにして……」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事