【選手権予選】「フクアリで味わった悔しさは…」流経大柏の守護神・松原颯汰がライバル市船との決戦を振り返る

2020年11月19日 安藤隆人

「必ずピンチは1本、2本はくると思っていた」1本目のピンチは見事に防ぎ切ったが…

69分に訪れた1本目のピンチは見事にセーブ。松原がチームを救う。写真:田中研治

 第99回全国高校サッカー選手権の千葉県予選決勝は、市立船橋と流通経済大柏の8年連続同一カードとなった。1年時からゴールマウスを守り続け、選手権準優勝も経験している流経大柏のGK松原颯汰(ジェフユナイテッド千葉内定)は、抜群の存在感を放ったが、『あと一歩』が届かなかった。

 鋭い反射神経とセービングセンス、キャッチング能力に長けた松原は、開始早々の4分に裏に抜け出した市立船橋のMF加藤想音に対して、鋭く飛び出してクリアをすると、終始落ち着いたプレーでライバル市船の前に立ちはだかった。

「立ち上がりはチーム全体が硬かったので、より冷静に対応しようと意識しました。徐々に全体が試合に慣れてきて、いつものサッカーが出来る様になってからは、必ずピンチは1本、2本はくると思っていたので準備をしていた」

 69分に1本目の大ピンチがやってきた。DF長田京兵の右からのロングボールにMF坪谷至祐が完全に抜け出し、松原と1対1に。だが、松原は冷静だった。両足に重心をかけて、面を作りながら距離を詰めると、ファーストタッチが乱れた瞬間、坪谷の顔が下がったのを見逃さなかった。「チャンスだと思ってボールにアタックに行った」と、坪谷のシュートを右足でブロック。スーパーセーブでチームを救った。

 このプレーでさらに勢いを掴んだ流経大柏は、森山一斗と川畑優翔の強力2トップを軸に攻め込むが、CB石田侑資が束ねる堅い守備をこじ開けることができず。試合は0-0のまま延長戦にもつれ込んだ。

 延長戦でも攻めあぐね、PK戦も頭をよぎった松原に延長後半終了間際の100分、2本目の大ピンチが訪れた。

 市船のロングボールをCB根本泰志がヘッドでクリアした瞬間、藤井と小林恭太のダブルボランチがセカンドボールを拾いに行くが、市船MF坪谷が鋭い出足で先にボールを突いたことで、入れ替わる形になってしまった。

 坪谷が突いたこぼれをDF塚田祐悟が根本を背負いながら受けて、そのまま右サイドのスペースへ流れて行った壺屋へヒールで落とすと、これを坪谷がもらって右サイドを突破。CB田口空我と右サイドバックの清宮優希の間にポッカリと空いたスペースにMF岩田夏澄が走り込むと、坪谷の横パスがピタリと届いた。

「根本のヘッドのセカンドボールを拾えなくて、サイドに展開をされたとき、枚数がいるから対処できると思った。でも、そこで相手に横パスを出された瞬間に、中を見たらフリーの岩田がいて…自分が止めるしかないと思った」

 しかし、岩田が右足を振り抜いてコースがわかった瞬間、松原は「これは厳しい」と直感したという。右足アウトサイドにかかって、ゴールに向かって弧を描くように飛んでいったライナーに対し、松原は精一杯ジャンプをして右手を懸命に伸ばした。だが、直感通りボールは右手の先を通り抜け、ゴール左隅に突き刺さった。

「もうアディショナルタイムしかないのに決められて、頭の中が真っ白になった。悔しかったし、信じられなかった」

 もう1本が止め切れなかった。そして、無情にも再開してまもなく、タイムアップのホイッスルが鳴り響き、流経大柏の2年連続予選敗退が決まった。
 

次ページ今後も残さている市船との再戦、そして来年は「ジェフのユニフォームを着て…」

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