柴崎&遠藤は過去最高水準の関係性。ボランチの最適解が見えた一方で、明暗を分けたベンチの差

2020年11月18日 加部 究

前半の日本には、まるで遠藤がフリーで王様のように起点となる時間帯も生まれた

メキシコ戦で先発した柴崎(左)と遠藤(右)のボランチコンビ。前半は相手を圧倒する時間帯も生み出した。写真:龍フェルケル

 メキシコ代表のヘラルド・マルティーノ監督は、自ら日本戦前半の出来を酷評した。

「特に20~25分間は、私が就任してからの2年間で最悪の時間帯だった。でもサッカーでは、有利な状況を結果に反映させなければならない。日本に欠けていたのは前半の決定力だった」

 一方で今回グラーツでの2試合を通して、日本代表は遠藤航と柴崎岳がボランチでコンビを組んでいる間は、良好な展開を継続することが出来ていた。パナマ戦では後半から遠藤が交代出場して劇的に流れを変えたし、メキシコ戦も柴崎がプレーをしていた57分間は、自らも「守備面で大きな課題はなかった。相手が前から圧力をかけてきても、MFで相手を攻略してビルドアップが出来ていたと思う」と振り返っている。

 遠藤とは縦関係を意識しながら「後ろが重くならないようにひとりが前に出て、FWのコースの切り方も指示出来ていた」(柴崎)という。もちろん前半日本が主導権を握れたのは、ボランチだけの功績ではない。トップ下に入った鎌田大地が圧倒的な存在感で前後左右に動いてボールを引き出し、守備から攻撃への流れを潤滑に繋ぎ続けた。ふたりのボランチと鎌田がライン間や相手の選手間でボールを受け正確なタッチで動かすことで、序盤から勢いよくプレッシングに来ていたメキシコも徐々に後傾していく。まるで遠藤がフリーで王様のように起点となる時間帯も生まれた。

 今まで日本のボランチにとって、欧州でプレーするのは高い壁だった。加茂周監督時代にボランチで新境地を切り拓いた名波浩も、セリエAのベネツィアでは1列前のポジションを指示された。稲本潤一もフルハム時代はトップ下としてハットトリックを記録したし、長谷部誠もボランチ以外にサイドバック、トップ下などを任されながら、現在はリベロに収まっている。最近では橋本拳人もロストフでは、攻撃的なMFで起用されているという。

 だが国内ではセンターバックとしてプレーしていた遠藤は、逆にドイツへ渡りボランチのポジションを与えられた。もともとDFとして経験を積み重ねてきたので、日本人選手に不足がちだった守備力が基準を満たし、本来備えていた展開力、縦パスの意識の高さなどが活かされ開花。今ではドイツでも「デュエル・マイスター」と呼ばれるほどに進化した。
 

次ページ後半、メキシコが流れを変えたのは、ベンチが選手たちを意図的に動かしたからだ

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