【岩政大樹】“試合巧者”とはどんなチームなのか?メキシコにあって日本にないものとは

2020年11月18日 岩政大樹

よく聞かれるのが「前半にできていたことを90分間できれば」という言葉だが…

ベテランのDFエクトル・モレーノ(15番)などのベテランと若手が融合され「今のメキシコ代表はかなり強い」と岩政氏も太鼓判を押す。写真:龍フェルケル

 日本代表はメキシコ代表に0−2で敗れ、10月から再開されたAマッチ4試合目にして初めての黒星となりました。前半いくつかのチャンスを作り出した日本代表でしたが、後半に2失点。内容も前半と後半では大きく変わってしまいました。

 こういう場合、サッカーでよく聞かれるのが「前半にできていたことを90分間できれば」という言葉です。しかし、それは大体、サッカーという競技の特性としては的を射ていないことが多いと思います。

 メキシコ戦の流れを大まかに振り返ってみましょう。

 まず、スタメンの構成と試合の前提条件です。日本代表は今回の遠征で、やはりメキシコ戦をメインターゲットとして考えていたようで、ここでベースのやり方と(今回のメンバー内での)ベストメンバーに近い形に戻して臨んできました。ただ、大迫勇也選手、堂安律選手、中島翔哉選手というこれまでの主力が不参加となっていることに加え、南野拓実選手をベンチスタートにしました。そのことで、前線のキャラクターは大きく変わり、トップ下の鎌田大地選手以外は直線的な攻撃を仕掛ける選手が並びました。

 対するメキシコ代表は、勝利を挙げた韓国戦から中2日。主力となる選手を残しながら、メンバーを約半数入れ替えてきました。ただ、先月行なわれた2試合のように、それぞれで違う戦術を試すのではなく、ベースとなるやり方で統一を図ってきました。

 この両チームの試合に挑む前提条件が、試合の前半の流れを大まかに決めていったように感じます。
 
 試合の立ち上がりにリズムを掴んでいたように見えたのはメキシコ代表。やり方を変えていないこととメンバーも大幅に変えていないことで、試合の感覚や代表チームの感覚をそのまま持ったまま試合に入れていたのでしょう。しかし、10分あたりからチャンスを作ったのは日本代表の方でした。"いつものメキシコ代表"の守備のやり方を理解して、相手の穴が見え始めた日本代表は次々にチャンスを作り出しました。

 肝となったのは1ボランチの選手を動かすことです。メキシコ代表は4−1−4−1のシステムを採用しています。特徴的なのが1ボランチの選手の役割です。この日は24番のルイス・ロモ選手が出場しましたが、4番のエドソン・アルバレス選手が担う場合も同じです。この選手が前線のプレスに連動し、比較的前へのベクトルを向けて、高めに出てきます。

 韓国戦やこれまでのやり方を日本代表はスカウティングしていて、おそらくここを選手たちに強調していたと予想します。9分に差しかかった頃に中山雄太選手から鈴木武蔵選手に縦パスを入れ込んだ場面があったのですが、そこでそのスカウティングの内容を思い出し、「今日も使える!」と感じた日本代表の選手たちは、その後の数分間に何度も同じ形を目指してボールを動かしていました。

 鈴木選手が迎えた15分の絶好機も同様でした。鎌田選手が絡んで遠藤航選手と24番(ロモ選手)を出し抜いて前を向いた柴崎岳選手が背後に走る原口元気選手へ。そこから鈴木選手がGKと1対1の状況を迎えることができました。

 この時間に先制点を取れていれば…というのは事実だと思います。メキシコ代表がこの時間帯を過ぎてからは少し日本代表の狙いに気付き始め、攻撃でも徐々にボールを落ち着かせ始めたことで、日本代表はチャンスを作れなくなりました。そして、後半には明確に2ボランチにすることで中央を閉じましたから、メキシコの守備のやり方に対して意図的な攻撃でチャンスを作れている間にゴールを陥れるということは、試合の"最初"の流れを決定づけるうえでも、大事な要素だったと思います。
 

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