「なぜ俺を使わないんだ」AZ菅原由勢が指揮官に“30分間の議論”を挑んだワケ「日本人はなめられるから…」【現地発】

2020年11月04日 中田徹

ナポリが誇る豪華アタッカー陣に対峙

オランダで2年目を向けた東京五輪世代の菅原。先月にはA代表デビューも飾った。(C)Getty Images

 ヨーロッパリーグ(EL)に参戦しているAZは、10月22日のグループステージ第1節で、ナポリ相手に敵地で1-0の勝利を収めた。57分の決勝ゴールは、右SBヨナス・スベンソンのクロスをMFダニ・デヴィトが蹴り込んだものだった。右サイドハーフとしてフル出場した菅原由勢は、ワンツーでスベンソンの突破をお膳立てした。

 ナポリ戦まで、AZはエージディビジで勝星がなく、不振に喘いでいた。今シーズン、出場機会に恵まれない菅原は、チームメイトについて「ボールを止まって受けようとするから、スペースを作れないし、相手も簡単に守りやすいし、それを助ける姿勢がない」と感じていた。

 ナポリ戦で右サイドのコンビを形成した菅原とスベンソンは、キックオフの前に「お互いに助け合おう」と話し合った。

「僕とヨナス(スベンソン)選手は、『シンプルな形が一番大事』と話してました。ゴールは"パスを出して動いて"というシンプルな形だったじゃないですか。あのゴールには、僕とヨナス選手の思いが重なってました。攻撃でも守備でも、右サイドはうまいこと出来ていたと思います。2人でいろんなことを共有しチャレンジした結果、僕らのサイドが決勝点につながったので嬉しかったですね」

【動画】菅原が決勝弾に絡む!強豪ナポリとの激戦の模様はこちら
 ナポリの左サイドは、イルビング・ロサーノ(メキシコ代表)が先発し、ロレンツォ・インシーニェ(イタリア代表)が途中出場した。トップ下のドリース・メルテンス(ベルギー代表)は頻繁に左サイドに流れてきた。菅原は左SBのエルサイド・ヒサイ(アルバニア代表)をケアしながら、ナポリが誇る豪華アタッカー陣に対峙した。

「実を言うと試合前、『右サイドに関しては先ずはお前が全部守れ。ヨナスに1対1の状況を作らせるな』と言われていたんです。前にプレスしても、ロサーノがボールを持ったら僕は行かないといけなかった。『やれ』と言われたら僕は自分のタスクをしっかりやる。走ってチームを助けることが、僕の強みです。

 そういう意味では90分間走りきった。つなげる場面でも味方が焦って(ロングボールを)蹴ってしまうと、そこからまた守備が始まるので、前にも後ろにプレスに行かなければいけないので大変でした。AZの方がカテナチオでしたね(笑)。ロサーノ、インシーニェ、メルテンスとマッチアップしたし、後から出てきた左SBのマリオ・ルイもいい選手でした」

 菅原は直後のADO戦(エールディビジ第6節。2―2)で本職の右SBとしてフル出場した。良い流れが来たかーー。そう感じた矢先、ELのリエカ戦(4―1)では出場機会がなかった。翌日、菅原は監督とコーチ相手に自分の思いをぶつけた。

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