【識者に訊く】森保監督は活動拠点を欧州へ移すべきか?「世界を知らない指揮官では“ベスト16の壁”は破れない」

2020年10月28日 清水英斗

拠点のハーフ&ハーフなど、柔軟にやるべき

A代表と五輪代表を兼任で指揮する森保監督。Jリーグで若手を発掘するには国内での活動が大事だが……。(C)SOCCER DIGEST

 日本代表は10月に続き、11月にも欧州遠征を実施する。コロナ禍で帰国後の行動制限などがあり今回も国内組の招集は難しそうだが、実際のところ、現代表の主力はほぼ欧州組で占められている。若年層の海外移籍も加速する中、果たして森保一監督が活動拠点を日本に置く意味はあるのか。サッカーライターの清水英斗氏に見解をいただいた。(※『サッカーダイジェスト10月8日号(9月24日発売)』より転載)

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 A代表の活動拠点を欧州へ移すのは、合理的なアイデアだと思う。最近のA代表は欧州組だけでチームを構成できるほどで、そうした選手たちの近くに代表監督が暮らしていれば、例えば一緒に食事をする機会も多く作れるし、彼らがクラブで置かれている状況も逐一耳に入れられる。直接トレーニングを視察することも、現地にいればさほど難しくはないだろう。それは間違いなくプラスだ。

 また、選手との距離の近さだけでなく、日本代表の監督が世界最先端のサッカーにライブで触れられる、というのも大事なポイントだと思う。
 
 Jリーグの監督でも熱心な人はオフになると必ず渡欧し、様々な学びを得ている。そうやって現地で見たもの、得たものについて熱っぽく語る様子は、これまで日本の指導者を取材するなかで何度も目にしてきた。ただそうした刺激は、たまに短期で出掛けて感じ、持ち帰るよりも、日常的にアップデートできる環境があれば、なお良いに違いない。

 彼らのサッカーがどういった仕組みで作られているのか。コーチングは? コンディショニングは? データは? スカウティングは? 代表監督こそ、そうした情報にアンテナを張っていなければならない。なぜなら、日本代表は日本人とは試合をしないからだ。

 日本人のことは熟知していても、世界を知らない監督では、ワールドカップでベスト16の壁は破れない。敵を知り己を知れば百戦殆うからず。その意味でも、A代表の活動拠点を欧州へ移すことにはメリットが多いだろう。

 もちろん、時期によっては日本に軸足を戻してもいい。例えば、ワールドカップのアジア2次予選の終盤。すでに安全圏まで勝点を稼いだので、ここで新たな国内組を抜擢してみようと、そうした意図がある場合は、一旦帰国してJリーグの試合を中心に視察すればいい。もしくはホームで予選が行なわれるのなら、選手よりも一足早く日本に戻って準備に十分な時間を割くなど、そのあたりは拠点のハーフ&ハーフというか、柔軟にやればいいと思う。
 

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