【識者に訊く】海外挑戦はJリーグで経験を積んでからにすべき? 「久保や南野が流れを変えた」

2020年10月27日 二宮寿朗

南野&久保のステップアップが欧州移籍の早期化を促進する

欧州で順調にステップアップを果たしている南野と久保。若い選手が「じゃあ俺も」となるのは致し方ないことだろう。(C)Getty Images

 今年8月、現役生活に別れを告げた内田篤人は、その引退会見で海外志向の強い若手に向けてこんな言葉を残していた。「海外に行きたいのは分かりますけど、チームで何かをやってから行けばいいのにな、とは思います」。日本人に最適な海外移籍の形とは? スポーツライターの二宮寿朗氏に改めて検証してもらった。(※『サッカーダイジェスト9月24日号(9月10日発売)』より転載)

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 数年前なら「経験を積んでから海外移籍すべき」に賛同したであろう。しかしながら時代は変わった。昨夏、東京五輪世代の選手たちが相次いで欧州に渡り、もはやその流れは食い止められない。南野拓実、久保建英らの順調なステップアップは欧州移籍の早期化を促進すると見ている。

 南野は5シーズン半、ザルツブルクでプレーして今年1月に2018-2019シーズンの欧州チャンピオンズ・リーグ覇者であるリバプールに移籍した。セレッソ大阪の育成組織からトップに昇格して、プレーしたのは実質2年。J2降格の憂き目に遭い、20歳になるシーズンにオーストリアに渡っている。早いタイミングでの海外移籍ではあったが、結果的にリバプール入りを実現させたのだから成功したと言っていい。

 バルセロナのカンテラ出身の久保は元々欧州でも注目されていた存在であり、他の日本人選手の背景とは異なる。昨夏、FC東京で出場機会を得るようになって半年、18歳になったタイミングでレアル・マドリーと契約してスペインに帰還した。レンタル先のマジョルカで己の価値をしっかりと示し、今季からはビジャレアルでプレーしているのだから上手く進んでいると言える。
 
 南野も久保もJリーグでタイトルなりベストイレブンなり何かシーズンを通しての結果を残したわけではない。その前に渡欧して成功に向かっているのだから、若い選手が「じゃあ俺も」となるのは致し方ないこと。上の世代の本田圭佑や香川真司らはJでフルに3年ほど働いてから海外へ飛び出している。実力を示さなければ、オファーは来ない。その時間が必要だった時代でもある。

 今は日本人選手の活躍もあって欧州移籍が日常となり、青田買いする動きがアジアにも及んできた。それでも成功例がなければ躊躇するかもしれないが、特に南野がA代表の中心選手になり、リバプールまで届いた事例はやはり大きい。
 

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