「言葉にならない」香川真司の“短かすぎた”ユナイテッド時代を英国人記者が回顧。「真のスターになろうとしていたのに…」【現地発】

2020年10月23日 スティーブ・マッケンジー

「素晴らしい成功を収めたとは思わないが…」

ノーリッジ戦でハットトリックを達成した香川。マンUで最も輝かしい瞬間だった。 (C)Getty Images

 香川真司がスペイン2部のレアル・サラゴサを退団した。このことは、イングランドでは大きなニュースにはならなかった。私は、それが香川と、彼のイングランドでの時間を象徴しているように思う。

 サー・アレックス・ファーガソン監督は、2012年にドルトムントに1200万ポンド(約15億6000万円)を支払い、「シンジ・カガワ」をオールド・トラフォードに連れてきた。しかし、香川にとってもユナイテッドにとっても残念なことに、名将の下で過ごした年月はたった12か月だった。

 この時代を振り返るとき、私は必ず言葉にならない悔しさも一緒に思い出す。57試合に出場し、わずか6ゴール・10アシストという記録に終わった香川が素晴らしい成功を収めたとは思わないが、彼はよくやっていた。悔しいのは、ユナイテッドで真のスターになるための突破口を開こうとしていたのに、それが叶わなかったことだ。

 原因は間違いなく、ファーガソンが長居しなかったことに由来している。もし、サー・アレックスが香川と一緒にあと1シーズンでも指揮を執っていたら、もっと長くユナイテッドで活躍できていたはずだ。
 
 だが現実にはファーガソンは去り、その後にデイビッド・モイーズがユナイテッドの監督になった。不幸なことに、香川はモイーズが好むタイプの選手とは違っていた。しかも、この指揮官はチームに自分のアイデンティティを押し付けようとするので、香川はプレー時間を得るのにすら苦労した。結局、モイーズはすぐにルイル・ファン・ハールに取って代わられた。あとは、皆さんがご存じの通りだ。

 それでも、世界のトップクラブで日本人選手が与えたインパクトはとても大きなものだった。事実、ユナイテッドのファンが今でも香川を高く評価していることが、それを物語っているといえよう。

 私は50年以上もユナイテッドのファンであり、シーズンチケットを購入し、株主でもあるマイケル・ベネット氏に話を聞いた。彼は「ユナイテッドのファンは今でも香川を批判することなく、人気者として記憶に残っていると考えている」と教えてくれた。

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