【鳥栖】勝利を呼び込んだ、“もうひとつの”粘り強さ

2015年03月15日 増山直樹(サッカーダイジェスト)

誰ひとりとしてサボらず、終盤の猛攻に耐える。

全員が最後まで集中を切らさず、G大阪を相手に完封勝利。鳥栖らしい粘り強さを見せつけ、開幕2連勝を飾った。写真:竹藤光市

 ペク・ソンドンのゴールで1点をリードして迎えた終盤、パトリックを中心としたG大阪のパワープレーを全員が身体を張って撥ね返す。
 
【J1 PHOTOハイライト】1stステージ・2節
 
「フィールドのみんなが頑張ってくれていたから、最後の局面でも怖さは感じなかった」と守護神の林彰洋が語るとおり、まさに全員守備で守り抜いた。何度も動き直して前線からプレスに行く豊田陽平、決死のシュートブロックを見せる谷口博之、宇佐美貴史のドリブル突破に落ち着いて対応するキム・ミンヒョク……。誰ひとりとしてサボる選手はいなかった。
 
 縦や横へ素早くスライドして守備陣形を保ち、強固なブロックは最後まで崩れない。宇佐美やパトリックをはじめ、G大阪のフィニッシュはことごとく精度を欠いていたが、それは張り替えたばかりの長い芝の影響だけではないだろう。
 
 「最後の場面で身体を張るのは大前提」と菊地直哉が言うように、鳥栖の守備陣が諦めずに身体を寄せたからこそ、相手のシュート16本のうち、そのほとんどが枠外へ飛んだ。
 
 1-0で昨季王者を下した勝因は、やはりこの"粘り強さ"だ。森下仁志監督も会見冒頭で「選手が90分間集中を切らさず、自分たちのゲームにしてくれた」と振り返っている。これこそ鳥栖の真骨頂であり、「Jで一番の献身性」(林)をいかんなく発揮した試合と言えよう。
 
 ただし、鳥栖が粘り強さを示したのは最後の20分間だけではない。むしろ、先制するまでの焦れるような0-0の展開にこそ、鳥栖の逞しさが感じられた。
 
 豊田をターゲットとしたロングボールを入れる。そこからのこぼれ球に周囲が反応する。サイドで、中央でと場所を変えながら何度も繰り返し、相手の隙を窺う。一見愚直にも映るやり方には、しっかりとした算段があった。

次ページ我慢比べを制した“したたかな”しぶとさ。

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