LFPは “危険なワナ”に陥った? 放映権「215億円」の不払い疑惑騒動でフランス・フットボール界に激震走る【現地発】

2020年10月13日 結城麻里

大統領まで引き合いに出す声まで上がっている

リーグ・アンの20-21シーズンはすでに開始し、放映もされている状態だ。(C)Getty Images

 フランスのフットボール界に激震が走っている。

 スペインのバルセロナに本拠を置き2020~2024年のリーグアン(1部)とリーグドゥ(2部)放映権を落札した「メディアプロ」が、コロナ禍などの影響で経営難に陥り、10月5日に予定されていたフランスのプロフットボールリーグ機構(LFP)に対する1億7200万ユーロ(約215億円)の支払いを履行しなかったためだ。

 これについて「メディアプロ」のジャウム・ロウレス社長は『L’EQUIPE』紙上で、支払いの延期と契約金額の下方修正を要望。「4シーズンにわたる契約全体の見直しではないが、今シーズンの放映権の金額について値下げを交渉したい」「意見交換の結果が10月17日前に出る見込みはないだろう」と語った。

 これでフランスの各クラブはパニックに陥った。LFPは今回入金されるはずだった放映権料を、10月17日には全クラブに分配することにしていたためだ。

 すでに各クラブは、コロナ禍による無観客試合や観客数大幅制限でチケット収入とスポンサー収入の激減に見舞われており、メルカートでの選手売却益も減少、フランス政府の特別支援措置に支えられる形で銀行から借入している。多くのクラブではそのローン返却に、まさに放映権料があてられることになっていた。
 そもそも「メディアプロ」は、年間8憶ユーロ以上を4年間支払うという莫大な金額を提示し、現地局『Canal+』や『beIN Sports』ら従来メディアを出し抜く形でフランス・フットボールの放映権をサプライズ落札。8月5日(17%)、10月5日(同)、12月5日(16%)、2月5日(17%)、4月5日(同)、6月5日(16%)と、2か月に1回ずつ分割払いする契約になっていた。

 これでフランスのフットボール界はスペインと並ぶ潤沢さを誇ることとなり、この契約をまとめたLFPゼネラル・ディレクター(GD)のディディエ・キヨ氏(当時)は、声高に「勝利」を誇ったものだった。

 ところが、そこへコロナ禍が襲い掛かった。しかも「メディアプロ」にはバックに銀行ギャランティーもついていなかったため不安が漂い、最初の支払い(8月)から数日の遅延を起こして、関係者を震え上がらせた。

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