【カメルーン戦采配検証】システム変更で炙り出された懸念材料。久保のベンチスタートに見えた狙いは?

2020年10月11日 加部 究

3バックは新しいオプションではなく、今後唯一の選択肢になりかねない?

カメルーンは途中出場となった久保。終盤にセットプレーで見せ場を作った。(C) JFA

 カメルーン戦後に吉田麻也は「3バックは監督もやりたいと話していて準備はしていた」と語った。森保一監督も「前日は4バックと両方のトレーニングをして、試合の流れを見て後半から3バックに切り替えた」と話している。確かに3バックを試せて「オプションが広がった」と前向きにとらえる見方もできる。だが反面日本の現状を見れば、3バックは指揮官の必然的な危機管理対策とも言える。

 今まで日本代表は4バック中心の流れが長く続いてきたわけだが、10年間以上も左SBには長友佑都が君臨し続け、バックアップの最有力候補だった酒井高徳は先に代表から退いてしまった。つまり左SB不在は長年の懸念材料で、とりわけ左利きの適任者が一向に育ってこない現実がある。そこでカメルーン戦は右利きながら左サイドでのプレーも多い安西幸輝をスタメンで起用したわけだが、日本の左サイドを有効活用されて「相手の両SBが高い位置を取って来たので、対応をはっきりさせるために」(森保監督)前半で4バックに見切りをつけることになった。

 もともと安西自身はアグレッシブな上下動を基盤に攻撃面に特徴のある選手なので、その前に守備意識の高い原口元気を起用したのは無難な選択だったが、逆に前半は原口が最後尾まで戻るシーンが多く、敵陣で起点を作れず安西の攻撃参加も引き出せなかった。一方で後半からウイングバック(WB)に回った原口に代えて、残り5分で菅原由勢をデビューさせたが、温情派の指揮官には珍しくテスト的な招集だったことを明言した。

「他に結果を出している選手がいる中での起用で、この幸運を活かして計算の出来る選手に成長していってほしい」

 長友が体調を崩して辞退したので、オランダ遠征での左SB候補は安西、菅原の2人だけだ。一方国内に目を転じても最も充実しているのが代表招集歴のない登里享平、小川諒也などで、実は3バックは「新しい」オプションではなく、今後「唯一」の選択肢になりかねないリスクがある。実際SBの枯渇ぶりとは対照的にCBは充実の度合いを増しているので、3バックを軸にするのは自然な流れなのだが、世界の趨勢を見て大舞台での対応を考えると4バックが出来ない(機能しない)のは好ましいことではない。
 

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