【川崎】仙台戦で光った中村憲剛の存在感。膨らんだ“ダブル司令塔”布陣への期待

2020年10月13日 本田健介(サッカーダイジェスト)

仙台戦はチームとして1ゴールしか奪えずとも…

仙台戦で今季2度目の先発を果たした中村。“らしさ”を見せた。写真:徳原隆元

[J1第21節]川崎1-0仙台/10月10日/等々力

 見慣れた、いや今年は少し新鮮に映る14番のプレーぶりは、やはりさすがだった。

 広い視野、豊富なプレービジョン、正確な止める・蹴るの技術。Jリーグ切っての司令塔である中村憲剛は、今季3試合目、先発としては2試合目のゲームで"らしさ"を十分に示した。

 昨年11月、左膝に人生初の大怪我を負い、約10か月、戦線から離れた。復帰を果たしたのは8月末の13節・清水戦。10分少々の出場でゴールを奪って見せるのだから、勝負強さは抜群で、約1か月後の18節の横浜FC戦では初先発。「45分プレーできたのがなによりの収穫」と話していた男は、さらにコンディションを上げ、仙台戦ではチームは1点しか奪えなかったとはいえ、67分プレーして攻撃のリズムを作ったのだ。

 今季からチームが導入した4-3-3の新システム。中村が担うのはこれまで務めてきたトップ下やボランチではなく、逆三角形で構成される中盤のインサイドハーフの一角だ。

 横浜FC戦ではまだ手探りな部分があると口にしていた男は、仙台戦後に話を訊くと、少なくない手応えを口にしてくれた。

「正直、横浜FC戦の時は、現段階の自分がどれだけできるか、フロンターレのサッカーでどれだけできるかを測っているところは正直ありました。それは致し方ないところもあって、自分の中でもいろいろ分析をして、反省もして。今日のゲームに臨むにあたっては、立ち位置も含めて、整理されたところはありましたし、(大島)僚太や(小林)悠がいたり、長くやっている選手、(車屋)紳太郎や(谷口)彰悟もそうですが、そこに(旗手)怜央とか(三笘)薫とか(田中)碧ら若い選手がいるなかで、自分が何をすべきかというところは、昨日のトレーニングから意識してやったつもりです。

 前半で1点取れて、もっと早い時間帯で取りたかったというところはありますが、相手も頑張るところがありますし、ただ、そのなかでも立つところ、顔を出すところ、いつ動く、いつ出すとか、そこらへんはもっと試合を重ねると、もっと良くなるんだろうなというのが、この間の横浜FC戦もそうですが、積み重ねていくと、どんどん良くなるんだろうなという感覚はあります」
 そんな中村のプレーに鬼木達監督も目を細める。

「1試合1試合良くなっていますし、仙台戦も彼にしかできないプレーというか、彼のところで難しいボールがキュッと収まったり、狭いスペースで受けながら、プラス、味方の狭いスペースを見つけて出せたり、そこはできています。あと強度のところは、長い時間やらないと難しいと思うので、この間の前半はハーフコートゲームに近い展開だったので、ああいう形でいけましたが、いったりきたりするゲームでも、そういうプレーを保てるようになれば、もっと良くなると思います。あとはゴールのところ。前でやる限り、よりゴールを取るところだったり、取らせるところだったり、こだわっていければと思います。そういうところも出てきていると感じますので、今後、楽しみにしています」

 今季の川崎では、アンカーは守田英正、もしくは田中碧が務め、インサイドハーフは大島僚太、脇坂泰斗、田中(アンカーと兼任)、下田北斗、もしくはウイングが主戦場の家長昭博らが担ってきた。

 もっとも相手の分析が進むなか、仙台戦でインサイドハーフとして組んだ大島と中村の"ダブル司令塔"の形は新たな可能性を示したと言えるのではないか(この日のアンカーは田中)。現にCFに入った小林悠も「ケンゴさんと僚太がシャドー(インサイドハーフ)にいて、長くやっている選手たちなので、欲しいところに入れてくれました。チャンスを多く作れる感覚はありました」と振り返る。

 鬼木監督の言葉にあった通り、相手を押し込める展開で、この形は有効であり、今後も貴重なオプションとなっていくはずだ。

 ちなみに、中村は後半にはバー直撃の直接FKを放っており、話を振ると、「あれは決めたかったですね!」と破顔しつつ、悔しさを滲ませる。

「昨日、練習で決めていたので。ちょっと近かったかなというのはありましたけど、やっぱりああいうのを決めれると、全然自分の価値っていうのは変わってくると思うので、練習します!」

 ゴール前を固める相手の守備を無効化する飛び道具として、華麗なFKにも注目だろう。
 

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