「ゴールの匂いがぷんぷんしてた」エース宇佐美貴史、スタメン落ちで見えた“立ち位置”と“チームの進化”

2020年09月24日 サッカーダイジェストWeb編集部

「思ったほどネガティブな感じでもなかった」

唯一の決定機をしっかり決勝点に繋げた宇佐美(33番)。やはりこの男は千両役者だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェストWeb写真部)

[J1リーグ第18節]G大阪 2-1 名古屋/9月23日/パナスタ

 フラッシュインタビューに登場した勝利の立役者は、笑顔を見せるでも歓喜を爆発させるでもなく、淡々とチームの3ポイント奪取を称えた。

【動画】エースの面目躍如! 宇佐美が名古屋戦で決めた劇的決勝ゴールはこちら!

 水曜日にパナソニックスタジアム吹田で開催されたガンバ大阪vs名古屋グランパスの一戦。守備陣の連携ミスから早々に先制点を許したホームチームは、攻守両面で高い連動性を維持するアウェーチームに翻弄されたまま、前半を折り返した。だが、後半は状況が一変する。53分に大卒ルーキー山本悠樹の直接FKで同点に追いつくと、閉塞感のあったチームアタックは活力に満ちあふれ、持ち前のパスワークとハイプレスで名古屋を圧倒していくのだ。

 迎えた76分、宮本恒靖監督は勝負に出る。遠藤保仁、渡邉千真、そして今季初のベンチスタートを余儀なくされた宇佐美貴史を同時投入。完全にゲームの流れを掌握したG大阪は87分、見事逆転に成功するのだ。遠藤のパスで右サイドを抜け出した小野瀬康介が相手GKとの1対1で横パスを送り、中央で拾った宇佐美が豪快に蹴り込む。スタメン落ちのエースが劇的な決勝点を奪う出来過ぎたシナリオで、難敵・名古屋に競り勝った。

 殊勲者は試合後、努めてクールにゴールを振り返った。

「ヤットさんからいい配球があって、コウスケがよく粘って落としてくれた。ヨウスケ(井手口陽介)とちょっとガチャガチャっとなりましたけど、それが結果的に(相手DFのオ・)ジェソクのディフェンスを妨害することにもなりましたね。いい状況でボールをもらって、あとは決めるしかないと。決める力は自分自身で持ってると思ってるので、はい、あとは決めるだけでした」
 
 今季は前節まで全16試合(第10節のサガン鳥栖戦は順延)にスタメン出場。だがわずか3得点しか挙げられず、エースとして物足りない数字だったのは確かだ。前節の北海道コンサドーレ札幌戦もチームは1-0で勝利したものの、宇佐美の出来はパッとしなかった。とりわけ後半に入ると運動量が落ち、流れから消えてしまう時間帯もある。代わって投入される渡邉やパトリックが土壇場で大仕事をするなか、宇佐美への批判が高まっていたのも事実だ。

 浪速が生んだ天才アタッカーは、意外にもベンチスタートをすんなり受け入れられたと振り返る。

「ずっと試合に出してもらってるなかで、結果を出せてなかった。スタメンから外されても当然だし、いまの自分には刺激が必要だなとも思っていました。ここからスタメンを勝ち取っていく。原点に帰ってそういうメンタリティーが必要なんかなと思ったりもしましたね。もちろん外されて嬉しいというのはないけど、自分にとっては必要なことだなって、ツネさんから(先発落ちを)聞いたときにそう感じたんです。悔しさはあったけど、思ったほどネガティブな感じでもなかった。だから今日、いい結果につながったんだと思います」

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