ビジャレアル久保建英が定位置獲得に必要なのは? かつてのメッシのような“偽9番”での起用に期待

2020年09月25日 清水英斗

ビジャレアル移籍は自分探しの途中のクレバーな選択だろう

2019-2020シーズンは5位のビジャレアル。カソルラが退団し、久保のトップ下定着はあるか。(C)Mutsu FOTOGRAFIA

 マジョルカでブレイクした久保建英の新天地がビジャレアルに決まり、リーグ戦が開幕した。将来のレアル・マドリー復帰を視野に入れる19歳の逸材にとって、これはベストな選択だったのか。クラブ規模やサッカースタイル、定位置を争うライバルとの比較など、様々な観点から改めてサッカーライターの清水英斗氏に検証してもらった。(※『サッカーダイジェスト』9月10日号<8月27日発売>より転載)
 
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 久保建英にとって最適なチームかどうかは分からないが、ビジャレアルはそうなることを期待できるクラブのひとつだ。昨季はラ・リーガで5位につけるなどサッカーの質は高い。肝心なのは久保がここで出場機会を得られるかだが、今季はヨーロッパリーグに参戦するので試合数自体が多く、さらに新監督のウナイ・エメリが獲得を熱望したという話もある。主力定着の期待は大きい。
 
 また、人口5万人の小さな街のクラブだけに、過度のプレッシャーに悩まされず、伸び伸びとプレーできる利点もある。名を捨てて実を取る。久保らしいクレバーな選択だと思う。
 
 もっとも、ビジャレアルは柔軟に攻守のバランスを保ちながら戦うチームで、ポゼッションへの偏りはない。それはエメリの戦術も同様だ。選択肢が増えた中でも、久保がバルセロナ系のチームを選ばなかったことを意外に思う人もいるだろうか。ただ、久保自身も発言している通り、今の彼にはスタイルに対するこだわりがなく、むしろどんなスタイルにも適応することを理想としている。その意味でも、ビジャレアルは彼の意志に沿った選択と言えるだろう。
 
 今のところ定位置争いのライバルと目されているのは、育成に長けたビジャレアルのユース出身、サムエル・チュクウェゼだ。左利きのドリブラー、ポジションは右ウイング、21歳という若さ、172センチの小柄な体格。スペックを見ると久保に似たタイプにも思える。だが、似て非なるとはこのふたりのことだ。チュクウェゼはアフリカ人らしいしなやかな身体能力を活かしたスラローム系のドリブラーで、突破型のプレーを得意とする。「ナイジェリアのアリエン・ロッベン」と呼ばれるように、典型的なウイングだ。
 
 これに対して久保のドリブルは、ゼロポジションとビート(拍子)の速さが特徴であり、リオネル・メッシにも似ている。サイドに張るよりも、中央でプレーするか、あるいは偽ウイングとして中へ入り、360度のプレー角度を与えられたほうが、その持ち味は生きる。
 
 マジョルカ時代はそれが見えにくいチーム事情だったが、それでもやはり、右サイドで局面勝負をするより、味方のSBが上がって幅を取り、それと連係しながら中央へ入るチョイスを与えられた時のほうが輝く傾向はあった。
 
 ビジャレアルではトップ下的に振る舞うことも多かったサンティ・カソルラが退団したので、チュクウェゼを右ウイング、久保をトップ下とすれば、お互いの特徴は素直に生きるだろう。あるいは、メッシとロッベンの共演に近いものが見られるかもしれない。そう考えると心は躍る。
 

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