【J新指揮官の肖像】横浜・エリク・モンバエルツ監督|自信を持たせて決断を促す“ラストピース”

2015年03月03日 藤井雅彦

練習では実際の試合により近い状況を設定。

就任会見では「自分のプロとしての経験をより豊かにできる挑戦」とコメント。写真:田中研治

 日本のサッカーファンに馴染みのあるフランス人監督と言えば、かつて名古屋を天皇杯優勝に導いたアーセン・ヴェンゲルと元日本代表監督フィリップ・トルシエの名前がすぐに思い浮かぶ。前者は知的で、後者は活発な印象が強い。いずれも日本サッカー界に名を残した指導者で、結果だけでなく新たなサッカー観をもたらしたという点で意義のある出会いだった。
 
 とはいえブラジル人の指導者と関わった総数には遠く及ばない。日本との歴史や関係性によるところも大きく、横浜の監督として招聘されたエリク・モンバエルツ監督も日本やJリーグでの指導経験はない。本人が来日にあたって「ヴェンゲル氏とトルシエ氏にアドバイスをもらった」と明かしたことからも、フランス人監督にとって日本は身近な国とは言い難い。
 
 そんななかでも、横浜がシティ・フットボール・グループとともに人選を進めた末に招聘した新指揮官は、未知の国である日本に興味津々だ。その証拠に来日した直後から積極的に日本食にチャレンジしている。寿司、焼き肉、天ぷらといった定番メニューを食べ進め、「納豆はちょっと難しい……」といったあたりも、ある意味で"王道"と言える。
 
 異文化への興味や関心が強く、春が近づいてきた昨今は「桜はいつ咲く? 日本の桜はフランスでも有名だよ」とほほ笑む。コミュニケーションを重要なツールと考え、選手はもちろん報道陣とも積極的にコンタクトを図っていく様子はフレキシブルという言葉がピタリとはまる。
 
 その一方で、ピッチ内では随所にこだわりをのぞかせる。ウォーミングアップのボール回しひとつをとっても、プレーする範囲をマーカーコーンでアバウトに設定するのではなく、ロープを用いて正確に区切る。ボールが少しでも外に出れば、それはアウトを意味する。こうして実際の試合により近い状況を作り出すというわけだ。新シーズンを迎えるにあたり、横浜のコーチングスタッフは慌ててカラーロープを購入した。

次ページ解決方法は「選手に自信を持たせること」。

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