鄭大世が加入の新潟。玉乃淳GMが語る夏の大補強の裏側

2020年08月31日 吉田治良

「獲得候補リストの上位4人が実際に来てくれた。我ながら“ミラクル”だと思う」

今夏、J1から新潟に加入した4人。中島元彦(左上)、鄭大世(右上)、福田晃斗(右下)、荻原拓也(左下)。写真:サッカーダイジェスト

「満足は、していないですね。順位はもちろん、試合内容にもです。どういう局面でも満足してはならない仕事だとも思っていますから」

 およそ3分の1を消化した今季のJ2での戦いについて聞くと、アルビレックス新潟の玉乃淳ゼネラルマネージャー(GM)は、そう即答した。

 15節終了現在、4位。昇格圏内の2位ギラヴァンツ北九州との勝点差は9ポイントにまで広がっている。「J1昇格しか頭にない」と開幕前に語っていた玉乃GMにとって、この成績は当然ながら「耐えがたい現実」に他ならない。

 新任のアルベルト監督のもと、丁寧にボールをつなぐ新たなスタイルの実現を目指している今季の新潟。しかし、過密スケジュールと酷暑の影響もあったのだろう。「走る量とその質をなかなか維持できず、相手のペナルティーエリア内に入る回数も限られた」(玉乃GM)ことで、勝点を取りこぼすケースが少なくなかった。

 だからこそ、夏の補強に力を入れた。それも、コロナ禍でどこも思うようなチーム強化が進められない中での、J1クラブ並みの大型補強である。

「夏に勝負をかけたいという考えは、シーズンが始まる前からありました。監督も僕も就任1年目なので、最初はしばらく様子を見るべきだと。そのうえで、"勝負の夏"に備えていました」

 夏のウインドーで獲得したのは、いずれもJ1からの4選手、セレッソ大阪のMF中島元彦(21歳)、浦和レッズのDF荻原拓也(20歳)、湘南ベルマーレのMF福田晃斗(28歳)、そして清水エスパルスのベテランFW鄭大世(36歳)だ。

「すべてのポジションで複数名の選手をリストアップしていきましたが、今季は過密日程で、どこも簡単には選手を出してくれない。それでも、監督と話し合って作成した獲得候補リストの上位4人が実際に来てくれたわけですから、我ながら"ミラクル"だと思います(笑)」

 育成型期限付き移籍の中島は、加入直後からスタメンに定着。ボールの収まりがよく、ここまではボランチで起用されているが、今後はサイドハーフやトップ下など、本来の攻撃的なポジションで得点に絡む働きを求められそうだ。同じく育成型期限付き移籍の荻原は、将来を嘱望される攻撃的な左SB。当初は徐々に馴らしていく予定だったが、瞬く間にフィットし、加入3戦目の14節・FC琉球戦で早くも先発出場を果たしている。

「獲得したら即戦力」を実践するのは、編成のトップである玉乃GMの補強に関するこんなスタンスがあるからだろう。

「強化予算がJ2で中位の今の新潟は、基本的にレンタルで良い選手を獲得しながら、チームを強化していくしかありません。だとすれば、いかにJ1の強豪クラブと良好な関係性を構築できるかが重要になると思います。我々は選手をお借りして終わりにはしない。そして選手はここでしっかりと経験を積み、さらにパワーアップしてレンタル元に戻る。『新潟に預けたら、凄まじく成長して帰ってくるよね』と、そう思っていただけるようになりたいですね。選手を輝かせ、チームを強くし、レンタル元にも還元する。そうした『Win-Win-Win』の関係性を築くことは、たとえJ1に上がったとしてもしばらくは必要だと思っています」
 

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