「ベルカンプの後継者」や「次代のベッカム」と称えられた天才MFが早すぎる引退後に掴んだ成功とは?【消えた逸材】

2020年08月28日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

リニューアル後のウェンブリーでゴールを挙げた最初のイングランド人

アーセナル時代のベントリー。当時は「ベルカンプの後継者」として期待された。 (C)REUTERS/AFLO

デイビッド・ベントリー(MF/元イングランド代表)
■生年月日/1984年8月27日
■身長・体重/175㎝・68㎏


 アーセナルで記録したプロ初ゴールは、左足の美しいロブショットで決めた。

 2004年1月、FAカップ4回戦のミドルスブラ戦だった。19歳のデイビッド・ベントリーは、不敵にもエリア手前からフワリと浮かせ、名手マーク・シュウォーツァーの頭上を破ってみせた。

 歴史に名を刻んでもいる。リニューアルオープンした〝聖地〞ウェンブリー・スタジアムでゴールを奪った最初のイングランド人として、だ。07年3月、イングランドがイタリアを迎え撃ったU-21代表の親善試合で、自慢の右足でFKを直接蹴り込んだ。

 13歳でアーセナルの下部組織に加入し、デニス・ベルカンプの後継者と期待された。繊細なテクニックと豊かな発想力を、セカンドトップやトップ下で発揮していたからだ。アーセン・ヴェンゲル監督もその才能を認め、16歳でトップチームの練習に呼んでいる。しかし、当時のアーセナルは黄金期を謳歌する最強軍団だ。若手が食い込む余地はなかった。
 レンタルで経験を積み、ブラックバーン・ローバーズで台頭した。05-06シーズンは6位でUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)の出場権獲得に貢献し、06-07シーズンはUEFAカップでチーム最多タイの3ゴールを挙げ、ベスト32進出の原動力になった。

 この頃にはウイングに定着し、正確な右足のクロスやFKで違いを作り出すその特長に、端正な顔立ちも相まって、こう称された。次代のデイビッド・ベッカム――。07年にA代表デビューさせたスティーブ・マクラーレン監督も、「デイビッド(ベッカム)のような右足の持ち主だ。繊細なタッチにボールコントロール、そして正確なあのパス」と比較論を後押しした。ただし、「実際にその域に達するまでには長い道のりを行かなければならないが」と言い添えることも忘れずに。

 結局、その長い道のりを踏破することはなかった。それどころか、第一歩を踏み出したばかりで、早くも心は折れかけていた。きっかけは、07年夏のU-21欧州選手権の出場辞退だった。ブラックバーンで年間51試合に出場した直後で体調に不安があり、クラブと相談のうえでそう決めた。

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