【長崎】覚醒した“小さなファンタジスタ”!大竹洋平に訪れた変化とは?

2020年08月20日 藤原裕久

単なる上手いだけの選手のひとりだったが…

今季はここまで3ゴール。得点への意識が高まっている。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J2リーグ13節]長崎2-0千葉/8月19日(水)/トラスタ

 ブロックを組む千葉を前に、こう着状態に陥っていた13節の前半29分、中盤でボールを奪った大竹洋平には、相手GK新井章太が前へ出てきているのが見えたという。ためらいなく振り抜いた左足から放たれたボールは、クロスバーに当たりそのままゴールへと吸い込まれた。

 これで大竹が挙げた今季の得点は3。まだ出場8試合の時点で、自身キャリアハイの4得点まであと1と迫った。かつて「上手さはあるが怖さはない」と評された技巧派は、着実に怖いアタッカーへ変貌しようとしている。

 大竹の課題は得点力だった。その才能や実力に疑いようはない。名古屋の丸山祐市、岡山の椋原健太らと同期だったFC東京のアカデミー組織に所属した時も、「常に自分が一番だというつもりでいた」し、年代別代表でもその才能は高く評価されてきた。テクニック、とりわけ左足のキックにおいて大竹の存在は常に別格だった。

 だが、小さなファンタジスタと呼ばれた選手は、思うように結果が出せず、さらに2度の大きな負傷もあって、いつしか、単なる上手いだけの選手のひとりになってしまっていた。年間の得点数は片手にも足りず、主戦場もJ2の日々が続く。そんな状況のなか、長崎へ加入した昨季には、キャリア最多39試合出場、キャリア最多タイの4得点を記録するが、「物足りない」としか感じなかったという。

「ゴール前での仕事が自分の良さ。それをしないとチームが上がっていけない。やっていかなければならない」

 そう決意したことで、得点への意識が大きく変わった。常にシュートを意識するようにもなり、今季2試合目の出場となった6節の岡山戦で同点ゴールを決めたのを皮切りに、今季初黒星を喫した徳島戦でもチーム唯一の得点を挙げ、他の試合でも得点に絡むプレーを披露。そんな大竹の変化に手倉森誠監督も目を細める。
 
「守備の意識が良くなっているし、攻撃でも得意な足もとで受けるプレー以外に、フリーランで相手をはがす動きや、プレーの判断で気が利くようになって、シュートへの意識が高まっている」

 リーグ開幕から7月まで無敗を維持していた長崎だが、暑さと日程のタイトさが増した8月は苦戦が続いている。それでも長崎が大きく崩れることはないだろう。なぜならこのチームには、得点への意識を高め、"単なる上手い選手"から、"怖い選手"へ変わろうとする大竹がいる。「長崎で2年目のシーズン。絶対にJ1に行きたいという気持ちが強い」と語る小さなファンタジスタは、ここからも大きな仕事を成し遂げてくれるはずだ。

取材・文●藤原裕久(サッカーライター)
 

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