【横浜】開幕直前にブラジルの逸材アデミウソンを獲得!

2015年03月01日 サッカーダイジェスト編集部

ポテンシャルは間違いなく本物

名門サンパウロで実績を積むなど、ブラジルでも将来を嘱望されているストライカーのひとりだ。 (C) Getty Images

 開幕を約1週間後に控えた2月28日、横浜が新外国籍選手の獲得を発表した。新戦力の名はアデミウソン。ブラジルの名門サンパウロ育ちの21歳のストライカーだ。
 
 各年代のブラジル代表にも選ばれてきた期待の逸材。そのプレースタイルや将来性についてレポートする。
 
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 カカやオスカール、ルーカス・モウラら世界屈指のタレントを輩出してきたサンパウロ。そんな王国屈指の名門の下部組織で這い上がってきた男が、アデミウソンだ。
 
 11歳からサンパウロの下部組織で育ち、U-17ブラジル代表のエースとして、11年のU-17ワールドカップで大会得点王を獲得。裏への鋭い抜け出しや、長短の正確なシュートなど若き日のロマーリオに似たプレースタイルから、"ノヴォ・ロマーリオ(新しいロマーリオ)"と称された逸材は、その後もU-20ブラジル代表でもプレー。自国開催となる来年のリオデジャネイロ五輪を目指すU-21代表にも招集されている。
 
 代理人の政治力でU-17代表の肩書きを得るが、その後鳴かず飛ばずの選手も珍しくないなか、アデミウソンは順調に世代別代表でステップアップしてきた。もっとも、前線に新旧のブラジル代表クラスが揃うサンパウロでは12年のトップチーム昇格後、一年を通じてフルにレギュラーとして稼働できずにいた。
 
 昨年のコパ・リベルタドーレスではクラブ史上最年少ゴールをマーク。12年には背番号11を与えられるなどクラブ側の期待度は高かったが、課題は若さゆえのムラっ気だ。ひとたび決定機を外すと空回りする悪癖があり、サンパウロでは3シーズンで公式戦114試合に出場し15得点。今季も1月に行なわれた開幕前の親善試合には出場しているが、1月末におたふく風邪に感染するなど、コンディション調整に失敗した。
 
 しかもサンパウロの今季の前線にはアレシャンドレ・パトやルイス・ファビアーノ、アラン・カルデッキの代表経験者やミシェウ・バストス、さらには2月に獲得したアルゼンチン代表のセントゥリオンがいることから、アデミウソンは苦しい立場に立たされていた。2月27日の会見でムリシー・ラマーリョ監督は「アデミウソンは出番を確保できない状態が続いていた。試合に出続けて成長するという意味では、彼にとってレンタル移籍は良い機会」と説明。サンパウロ側も、初の国外クラブでのプレーは、アデミウソンが課題を克服するために恰好の場だと考えていたようだ。
 
 肝心のプレースタイルは、抜群のスピードと当たり負けしないフィジカルを活かした突破力、ミドルレンジからも鋭く射抜くシュート力が持ち味だ。周囲から活かされるタイプのフィニッシャーなだけに、比較的Jリーグへのフィットは速いだろう。「世代別代表の背番号10」という見出しがスポーツ紙によってひとり歩きしているが、プレースタイルは完全にFW。1.5列目でのプレーも可能だ。
 
 サンパウロのサポーターからは"マキニーニャ(小さなマシーン)"の愛称で親しまれてきた俊英のポテンシャルは間違いなく本物。メンタル面の課題と、Jリーグのテンポに馴染めば、新天地でゴールマシーンとしてフル稼働しうるだろう。
 
取材・文:下薗昌記(サッカーライター)

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