【現役監督のCL展望】戦力で圧倒するパリSGが抱える「不安要素」。完成度の極めて高いアタランタにも勝機はある

2020年08月12日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

パフォーマンスの高さと安定度は傑出

ともに左サイドからの仕掛けを得意とするネイマール(左)とゴメス(右)。チームを勝利に導くのは?(C) Getty Images

[チャンピオンズ・リーグ準々決勝展望]
アタランタvsパリ・サンジェルマン
●日時:8月12日20時(日本時間28時)キックオフ
●会場:スポルト・リスボア・ベンフィカ
●欠場者
・出場停止:アタランタ=なし パリSG=ディ・マリア(MF)
・欠場濃厚の負傷者:アタランタ=イリチッチ(FW)、ゴッリーニ(GK) パリSG=ヴェッラッティ(MF)、クルザワ(DF)

 今シーズンのCLで最大のサプライズであるイタリアのローカルクラブが、石油国家をバックに持つ世界有数の金満クラブに挑むという、あらゆる意味で最もコントラストの強いカード。戦力的にはパリSGが圧倒的に優位だが、チームの総合的なフィジカル/メンタルのコンディション、故障者と出場停止、戦術的な相性といった様々なファクターを考慮に入れれば、アタランタにも勝機はあるだろう。

 アタランタは今回の「ファイナル8」を最も良い形で迎えるチームのひとつ。初出場でベスト8という望外の躍進がもたらすモチベーションと勢いに加え、就任4年目を迎えたガスペリーニ監督の下でチームは極めて高い完成度に達しており、パフォーマンスの高さと安定度は傑出している。

 不安要素は攻撃のキーマンであるイリチッチの状態。故障で7月中旬から戦列を離れた後、リハビリに励んでいるが、この試合には間に合いそうにない。同じくレフティーである代役のマリノフスキに期待だ。

 アタランタにとってCLベスト8という舞台は、クラブ、監督、選手の全てにとって未知の世界であり、そのプレッシャーがマイナスに働く可能性もある。しかし、完全なチャレンジャーゆえ失うものは何もないだけに、開き直って思い切り良く戦えれば、本来の力を存分に発揮する可能性もまた十分にある。この準々決勝の段階では、プレッシャーと開き直りの収支バランスはプラス、つまり開き直りの側に傾くのではないかというのが、私の予想だ。
 
 一方のパリSGは、複数の不安要素を抱えている。まず、リーグ・アンが再開されないまま打ち切りとなったために5か月近く公式戦から遠ざかり、7月24日と31日の国内カップ決勝を2試合こなしただけで、CLに臨むことがひとつ。フィジカル的にはフレッシュにしても、試合勘やメンタル的なインテンシティーの持続という点には小さくない不安が残る。

 戦力的にも、ネイマールと並ぶ絶対的なエースであるエムバペが足首の故障で離脱したうえ(現在は全体練習に復帰)、この準々決勝はディ・マリアも累積警告で出場停止。これらの不安要素が、戦力的な優位性を揺るがす可能性も否定できない。アタランタが付け入る隙は、ここにこそあるだろう。
 

次ページ総合的に見れば、勝ち上がりの確率はほぼ五分五分

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