【CLポイント解説】アーセナル 1-3 モナコ|モナコの手のひらで踊らされたアーセナル

2015年02月26日 片野道郎

リスクを冒して攻め急ぎ墓穴を掘ったアーセナル。

1)ラウンド・オブ16の第1レグで最大のサプライズ
 
 下馬評では明らかに劣勢と見られていたモナコが、敵地で3ゴールを挙げてアーセナルを粉砕したこの試合は、ラウンド・オブ16の第1レグで最大のサプライズだった。
 
 アーセナルは攻勢に立ちながらやや不運な形で先制を許し、そこから攻め急いでカウンターで追加点を与えるという、落ち着きに欠ける稚拙な試合運びで自ら墓穴を掘った格好だ。
 
 それと比べてモナコは、A・マドリーを思わせる秩序だった組織的守備と切れ味鋭いカウンターで、受け身になりながらも余裕を持って試合をコントロール。意外ではあるが説得力に満ちた戦いぶりで番狂わせを完遂した。
 
2)前半の展開はモナコの注文通り
 
 ホームのアーセナルは、ウィルシェア、ラムジー、ドゥビュシーといった主力を故障で欠くとはいえ、それを感じさせない強力な顔ぶれ。立ち上がりから主導権を握って攻勢に立ち、開始2分に早くもウェルベックが決定機を迎えるなど、ペースを握って試合を進めるかに思われた。
 
 しかしモナコも、最前線に残ったベルバトフを除く9人がコンパクトな陣形を保ってプレッシャーをかけ続け、アーセナルが得意とする細かいコンビネーションを封じ込めて、枠内シュートを1本も打たせずに前半を凌ぎきった。
 
 試合の流れを決定づけたのは、38分にコンドグビアが放った30メートルの一見なんでもないミドルシュート。コース上に入ったメルテザッカーにかすって弾道が変わり、逆を取られて身動きできないGKオスピナを嘲笑うようにゴール左隅に飛び込んだ。
 
 これでモナコは、敵地でアウェーゴールを奪って先制し、守りを固めてカウンターの機会をうかがうという、完全に狙い通りの展開を手に入れた。
 
 後半の45分間も、試合はモナコが敷いたこのレールの上に乗って進み、ビッグサプライズを完遂させることになる。
 
3)攻め急ぎが致命傷になったアーセナル
 
 先制を許したアーセナルは、後半開始直後から積極的に前に出てハイプレスを敢行、攻撃に転じても最終ラインを敵陣まで押し上げ、フルスロットルで攻勢に出る。しかし、血気に逸るあまり、攻守のバランスを崩すところまで前がかりになっては、カウンターを浴びるのは避けられない。
 
 53分、敵陣深くに7人が攻め上がって押し込んだところでボールを失い、一気に裏に展開された時点で、自陣にはコシエルニーただ1人しか残っていなかった。
 
 対するモナコは、ドリブルで突進するマルシアルと、並走してゴール前に走り込むベルバトフの2人。この決定的な2対1を百戦錬磨のベルバトフが外すわけもなく、アーセナルはあまりにも痛い2点目を献上する結果になった。
 
 この場面でアーセナルは、コシエルニーとともに最後尾に残っていたメルテザッカーが、マークしていたマルシアルを放してボールホルダーに当たりに行くという信じられないほど軽率なミスを犯している。
 
 しかしそもそも、ホーム&アウェーで180分を戦ううちのまだ4分の1しか過ぎていないこの時点で、我を忘れたようにリスクを冒して攻め急ぐこと自体、ゲームマネジメントとして未熟に過ぎる。重大だったのは、むしろこの精神的な余裕のなさのほうだ。
 
 試合を通してほとんどベンチから動かず、テクニカルエリアに出て指示を出すことすらなかったヴェンゲル監督は、ハーフタイムにどんな策をチームに授けていたのだろうか。
 
 
 
 

次ページ若さとスピードで違いを作り出したモナコ。

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