【安永聡太郎】もう“和製メッシ”の域を超えている。日本代表も「久保建英+10人」でチームを作るべき

2020年08月06日 木之下潤

レバンテの監督が僕に「久保がほしい」と…

マジョルカでは攻撃の中心として違いを作り出した久保。(C) Getty Images

「来シーズン、久保はもう一つ上のレベルでレギュラー争いをするべきだ」

 これは誰もが思っているところだろう。彼の当面の目標は、レアル・マドリーで主力として戦うことだからね。今シーズン、確実に"久保建英"という名前をスペインのサッカーシーンに刻んだので、「久保がほしい」というクラブはたくさんあるのは当然だ。

 僕自身も直接そういう声を聞いた。

 昨年12月のクラシコ「バルセロナ×レアル・マドリー」を現地で観戦したんだけど、そのときにレバンテの監督、パコ・ロペスと同じテーブルで食事をすることになった。スペインでプレーしていたときの友人に誘われてレストランに着くと、そこにパコ・ロペスもいたんだよね。

 話を聞くと、毎週月曜日の夜にバレンシア州出身の友人10名くらいで食事会をしていて、彼もそのメンバーの一員だそう。久保のボス、マジョルカの監督ビセンテ・モレーノもそのメンバーだと言っていたけど、そのときは用事があって欠席だった。

 12月中旬の段階だったけど、パコ・ロペスは久保のことを手放しで褒めていて、「ほしい」と僕に強く言っていた。

 僕は彼がすごくいい監督だと評価していて、強豪クラブに引っ張られる可能性もあるんじゃないかと思っている。ここ数シーズン率いたレバンテは、リーガの中堅クラブながら、マドリーやバルサなど上位クラブを相手に最も勝星を挙げている。

 戦術的に分析しても、すごく優秀な監督で、ボールをしっかり後方からつなぎながらも、自分たちが不利な場合は2トップがどう守備に加わって、かつ奪ったあとにどう攻めるかまで戦術に落とし込んでいる。守り方を決めてから攻め方=槍を選ぶのではなく、槍を決めてから守り方を決められる監督はそう多くない。
 
 自分たちが「今日の試合は守れる」と判断したときは、2トップ+2サイドハーフを攻撃的にして、「4-4-2」のボランチ一枚も攻撃に比重を置いてプレーさせる。もちろん自分たちが格下だと決断したときは「4-4」の2ラインを守備的にし、その代わり2トップを2人ともスピードのある選手にしてカウンターを積極的に狙う。そのカウンターをどこから発動させるのかをきっちり戦略としてチームに落とし込み、相手によって戦術を変えられるチームづくりができる。

 そんな優秀な監督が、「久保がほしい」というんだからうれしいよね。

 今シーズンのレバンテは相手が攻めてくれてカウンターを発動させたときは力を発揮できるんだけど、後ろからボールをつなぐときはゴールにつながる回数が圧倒的に少ないのが悩みだった。パコ・ロペスは「久保がいると、カウンターを繰り出せなかったときにも攻撃の質を高められるから、ぜひうちにほしい」と熱く語っていた。

 来シーズンに「もう一つ上のレベルでレギュラー争いをする」ことは、久保自身も望んでいるはず。もう一段階上のレベルの選手たちと「誰の間合いでフットボールをするのか?」という争いをしたほうがいい。そういう状況の中で、監督も認めてくれる環境でさまざまなチャレンジができるのはすばらしい経験になる。
 

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