【横浜FC】感染のリスクを背負いながらも――下平隆宏監督が語る「義務」

2020年08月04日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「次に向けて準備し続けていくことしかできない」

感染の脅威を感じつつ、「抱えるストレスは大きいが頑張ってくれている」と選手たちを労う。写真:徳原隆元

 新型コロナウイルスの感染防止の影響で中断していたJリーグが、ようやく再開しようとしていたタイミングだった。サッカーダイジェスト本誌のある企画で、元ベガルタ仙台監督の渡邉晋氏に電話取材した際、強く印象に残っている言葉がある。「最後に、僕なりに感じることを伝えたい」と切り出した渡邊氏の想いに、ハッとさせられた。

「新型コロナウイルスの脅威が完全に収束していないなか、選手たちは感染のリスクを背負ってピッチに立っています。それは、クラブに携わるすべての人も同じ進境でしょう。Jリーグでクラスターが発生しないよう、細心の注意を払い、強い自覚と責任感を持って戦っていると思います」

 そうした視点は完全に抜け落ちていた。単純に、サッカーをまた見られることに一喜一憂するばかりだった自らを恥じた。

「選手たちはようやくサッカーができる喜びを噛みしめ、サッカーのある日常を取り戻すために尽力してくれた様々な方への感謝の気持ちを胸にプレーしているはずです」(渡邉氏)

 それも紛れもない事実だろう。待ち望んだファンやサポーターのために、必死に戦おうともする。ただ、コロナ禍は完全に消え去っていない。どれだけ予防を徹底していても、いくつかのJクラブで陽性者が出てきている。
 
 それでも、感染のリスクを背負いながらも"サッカーのある日常"のために日々現場で戦っている人たちがいる。その当事者のひとり、横浜FCの下平隆宏監督に、現状をどう捉えているかを訊いた。

「どこでどう感染するか分からない状況ですが、しっかりと日常生活に気をつけながらやっています。もちろん、ストレスが溜まったりとか、制限される生活が続いていて、さらに(チームとして)結果もついてこない状況で、本当に選手たちの抱えるストレスは非常に大きいものがありながら、頑張ってくれていると思います。

 そういったなかでも、我々はしっかりとサッカーを見せるというか、サッカーをし続ける義務がある。メンタル的には正直、なかなか辛いところはありますけど、サッカーができる喜びがあり、次の試合に向けて準備し続けていくことしかできないので。なんとか頑張ってやっていきたい」
 

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