エムバペは奇跡を起こすか? CLアタランタ戦で“復活”するため、驚異の回復力を発揮【現地発】

2020年08月04日 結城麻里

アタランタ戦は絶望的とされていたが…

リーグカップ決勝の優勝セレモニーに登場したエムバペ。ネイマール(左)らとともに戴冠に酔った。 (C)Getty Images

 怪物キリアン・エムバペが脅威の治癒力をみせ、パリ・サンジェルマンとフランスに期待が膨らんでいる。

 7月24日のフランスカップ決勝(対サンテティエンヌ、1-0)で危険なタックルを受け、離脱を余儀なくされたエムバペ。3回にわたる検査の結果は「右足首外側の靭帯損傷を伴う重度の捻挫」で、「約3週間の戦線離脱」が発表された。これで、チャンピオンズ・リーグ(CL)のアタランタ戦(8月12日)出場も「ほぼ困難」との見方が支配的になった。

 ところがサプライズは早くも7月29日にやってきた。この日エムバペはパリSGのトレーニングセンター「カン・デ・ロージュ」に、何事もなかったかのように出現。松葉杖も固定器具も使用していなかったばかりか、足取りもごく普通だった。

 7月31日のリーグ・カップ決勝(対リヨン、0-0、PK戦6-5)後も同様で、キリリとした背広姿で颯爽とスタッド・ド・フランスのスタンドからピッチに降り、奮闘したチームメイトを祝福。表彰台にも普通の足取りで上がり、大きな笑顔を炸裂させた。これらは、捻挫による腫れが完全に引いたことを意味する。

 「62時間を経過した後、ときにグッドサプライズが起きることがある」と指摘するのは、捻挫に詳しい医療関係者だ。

 加えて、「医療部門のコミュニケ(声明文)を書くにあたっては、戦略的懸念から、ときに意図的に曖昧にしたり方向づけしたりすることが。とくにチャンピオンズリーグの時期はなおさらだ」と明かす内部関係者もいる。ただ嘘を書くという意味ではなく、あくまでも全ては明かさないという話だ。

 それにしても、今回のケースでは、エムバペの意志の強さが目を引く。ピッチ上と同じように脅威のスピードで治癒し、アタランタ戦のピッチに立ちたいと思っているからこそだろう。エムバペの近親者は、アタランタ戦のマッチペーパーに入る可能性について、「90%のチャンスがある」と言い切っている。

 「脳が治癒を指令する。希望がある場合は、治癒のチャンスもさらに大きくなる」と分析するのは、リーグアンで活動するある医師。パリSG内部でも、みながエムバペの治癒力を強く信じ始めているところだ。

 このままいけばエムバペは、まず軽いランニングを開始、次いで足首を交互に使う練習をし、次にスピード走を試行訓練することになる。スタッフはこれらをこなしたうえで、できれば8月8日にボールを使ったトレーニングに突入したいと思っているようだ。ファロ(ポルトガル南部)での合宿開始日である。

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