開幕6戦未勝利の清水はなぜゴールラッシュを実現できたのか? 今季初勝利から見えた進化と課題

2020年07月27日 前島芳雄

「良いボールを入れてくれると、中に存在感のある選手たちがいるので…」

今季初白星を挙げた清水。クラモフスキー新監督の下で目指す攻撃的なスタイルは着実に進化を見せている。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 開幕から6試合勝利がなく、チームのワーストタイ記録となっていた清水がようやく今季初勝利を挙げた。これまで1試合での複数得点がなかったチームが一気に4ゴールを決め、最後の2失点こそ余計だったが、チームのムードがかなり好転したことは間違いない。

 これを上昇気流に乗るきっかけにしたいところだが、その可能性を探るうえでも試合内容から見えた進化のポイントや課題を整理しておきたい。

 まず大きく進化した部分は、セットプレーから4得点を叩き込んだことだ(CKから3点、FKから1点)。キッカーはすべて左ウイングの西澤健太で、3アシストを記録。元々キックの質や精度に定評のある選手だが、この試合で彼が放ったキックは「速くて、縦に曲がって、高精度」というセットプレーで大事な要素をすべて揃えていた。

 ピーター・クラモフスキー監督も「(西澤のキックが)素晴らしかった。良いボールを入れてくれると、中に存在感のある選手たちがいるので、相手にプレッシャーをかけられる」と語り、西澤のキックが良くなってきたことを喜んだ。

 練習が公開されていないので断定はできないが、事前にきっちりとデザインされた形があったうえで、西澤のキックがそれをイメージ通りに実現させたという印象が強い。今節では、191センチの立田悠悟を筆頭に、ヘナト・アウグスト(185センチ)、ヴァウド(183センチ)、ファン・ソッコ(183センチ)、エウシーニョ(180センチ)がボックス内に並び、ゴール前ではカルリーニョス・ジュニオが折り返しのボールを待っていた。西澤や他のキッカーがキックの質を保ち続けることができれば、今後もセットプレーは大きな得点源となるだろう。

 もうひとつ進化が際立ったのは、前半の45分間をほぼ支配し続けたことだ。これまでの試合では、前後半とも序盤は良い戦いができるのだが、徐々に相手に流れを渡してしまい、残り15分での失点が非常に多くなっていた。それが今節の前半では一度も大分に主導権を渡すことなく、多くの時間を敵陣でプレーし続けたうえで、ラスト4分で先制点を奪ってみせたのだ。
 

次ページ奪われてもすぐに奪い返すシーンが増加。ボールを持つ時間も増加

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