【鹿島】大不振が嘘のような大量4ゴール! “ケチャドバ”をもたらしたザーゴ監督の起死回生の一手

2020年07月20日 小室功

「どのチームよりもチャンスは作っている。あとは決めるだけだ」

泥沼の公式戦6連敗。ザーゴ監督が打った大胆な手が横浜戦で吉と出た。写真:田中研治

"ケチャドバ"とは、まさにこういう現象を言うのだろう。

 シーズンインから6戦全敗でわずか1ゴール。しかもその1点はオウンゴールと、暗闇のなかにいた鹿島がここまでの不振が嘘のような大量4得点で、昨季のJリーグ覇者である横浜を粉砕したのだ。

 2得点を挙げて、"ケチャドバ"の口火を切った今季初先発のFW上田綺世は「何かを変えてやろうというより点を取ること。その一択しか考えていなかった」と、ゴールへの執着心を打ち明ける。
 
 決まるときは決まる。決まらないときは決まらない。根拠があるようで、すべては後付けのような決定力という領域。強いから勝つのではなく、勝ったから強い。サッカー界に伝わる、その話にどこか似ているが、厳しさを増す周囲の評価を覆すには勝利のためのゴールが必要だった。
 
「どのチームよりもチャンスは作っている。あとは決めるだけだ」
 
 ゴール欠乏症について問われるたび、指揮官は強気の姿勢を崩さなかったものの、第4節の浦和戦に負けたあとのオンライン会見では、どこか目がうつろだった。長年、勝負の世界で生き、酸いも甘いもかみ分ける、さすがのザーゴ監督も「これだけ得点を決められないのは現役時代を含め、初めての経験」と、想定外の事態に胸中は穏やかではなかったはずだ。

 ゴールを決めるために、何を、どうすべきか。「みんなで頑張ろう。今やっていることを続けよう」といった類の話だけではなく、横浜戦に向けての1週間の準備期間のなかで、ザーゴ監督が打った手は大胆な"変化"だった。

 クラブ伝統の4-4-2から4-2-3-1にシステムを変え、ボランチより前の4人のスタメンと並びもいじった。中断明けの2トップはエヴェラウドとファン・アラーノ、右MFが土居聖真もしくは染野唯月、左MFが和泉竜司だったが、上田綺世を1トップに置き、その後ろに左からエヴェラウド、遠藤康、ファン・アラーノを並べた。

 今季初めての布陣だけに「よくいえば臨機応変、悪くいえば行き当たりばったり」と、批判される可能性も無きにしも非ずだが、終わってみれば吉と出た。

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