日本女子サッカー新時代の旗手は米国在住の金融ウーマン。岡島喜久子チェアが描くWEリーグの近未来図

2020年07月17日 西森彰

「たくさんのサッカーをやっている少女たちに、観戦してもらえるリーグにしたい」

来年創設されるWEリーグのチェアに就任した岡島喜久子氏。長年アメリカに在住し金融ビジネスの世界で活躍しながら、日本女子サッカー界の運営にも精通する。写真:日本サッカー協会提供

 7月13日、来年創設されるWEリーグの新たなリーダー、岡島喜久子チェアの就任記者会見がオンラインで行なわれた。

 岡島チェアは、高倉麻子・現なでしこジャパン監督らとともに、日本女子サッカーの黎明期を経験している。皇后杯の第1回大会にあたる全日本女子サッカー選手権を制した、FCジンナンでプレーし、中国で行なわれた広州女子国際大会には、日本女子代表の一員としてもその名を連ねた。また、運営畑でも汗を流し、日本女子サッカー連盟設立当時の理事、後に事務局長を務め、1984年の西安招待国際女子大会には主務として参加している。

 ピッチの中では選手として、そして外では組織の運営者として、双方の立場を経験している。WEリーグの運営についても「選手のほうから『こうして欲しい』という要求が出てくるのは悪いことではない」。お互いに意見を出し合うことで、リーグが良い方向に進んでいくことを望んでいる。

 岡島チェアは、早稲田大学卒業後、ケミカルバンク(現・JPモルガン・チェース銀行)を皮切りにトレーダーとして活躍、1991年からは約30年間、アメリカで暮らしている。結婚、出産後も、ビジネスの第一線に返り咲けるあたりは(岡島チェア自身の能力はもちろんだが)、"Women Empower"を最大限に引き出すアメリカ社会の特長を感じる。

 アメリカは、女子サッカーの人気でも日本の先を行く。母国の女子代表が圧倒的な人気で、ユニホームの販売数ひとつとってみても、ヨーロッパの有名クラブ、強豪国代表(これらは男子も含めて)に決してヒケをとらない。岡島チェアも、WEリーガーやなでしこジャパンの選手たちが、日本の少女たちの憧れになってもらいたいと考え、第一歩として「たくさんのサッカーをやっている少女たちに、観戦してもらえるリーグにしたい」という。

 現在、なでしこリーグ会場に少女の姿は、期待されるほど多くない。その要因のひとつが、彼女たち自身の公式戦と、なでしこリーグのスケジュールが重なっているという点だ。これについて、岡島チェアはWEリーグの試合会場で、時間をずらして少女たちの公式戦を開催するというアイデアを披露した。まずは、ストレートに、WEリーグが育成を担当するアカデミーチーム同士の公式戦を、前座(後座)試合にする方法が連想される。そして、その他の大会やフェスティバルと並べての開催もできるのではないか。
 

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