「久保と決定的に違うのは…」なぜ“韓国の至宝”イ・ガンインは伸び悩んでいるのか?バレンシア番記者に訊く

2020年07月15日 下村正幸

エースのロドリゴとポジションが被るが故に…

バレンシアで燻っているイ・ガンイン。契約延長のオファーを拒んでいる。(C) Getty Images

 韓国代表のイ・ガンインがバレンシアからの契約延長オファーに首を縦に振らず、移籍を志願している(現行の契約は2022年6月まで)。昨夏に続く去就騒動だが、この時は、レンタルを進言したマルセリーノ・ガルシア・トラル監督と残留を主張したフロントの意見が真っ向から対立した。そして、この衝突が指揮官の開幕直後の解任の要因のひとつにもなった。

 フロントがマルセリーノの後任として招聘したアルベルト・セラーデス(先月29日に解任)は、就任2戦目のチャンピオンズ・リーグのチェルシー戦でラスト数分ながら後半途中からイ・ガンインを起用。さらに翌週のラ・リーガ第6節のヘタフェ戦では得点を決めるなど、その後も継続的に出番を得ると思われた。

 しかし、それはほんの一過性の現象に過ぎなかった。同じカンテラーノのフェラン・トーレスのブレイクに本人の怪我も重なり、しばらくするとヒエラルキーの最下層に据え置かれるまでに追い込まれた。
 
 出番を得られなかった要因は、ポジションの問題とも関係がある。この19歳がもっとも得意とするのはトップ下かセカンドトップだ。ただそこにはエースのロドリゴが君臨しているため、自ずとサイドに活路を見出すしかないが、かといって突破力があるタイプではない。

 縦への推進力が求められる左サイドへの適性は低く、逆足となる右サイドについても中に切れ込めるよう自由を与えることが前提となる。ましてやバレンシアが常用するシステムは4-4-2。同サイドのサイドバックと連携を取りながら守備にも奔走する役割が要求されるが、運動量が豊富とは言えない現状のイ・ガンインに激しいアップダウンを繰り返すプレーを期待するのは酷である。

 セラーデス監督もそうした点を考慮して出場機会を与えなかったと考えられるが、問題は居場所を失ったことで、イ・ガンインがフラストレーションを溜め込んでしまったことだ。バレンシアの地元スポーツ紙『Superdeporte』のセサル・イスキエルド記者は、こう解説する。
 

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