「メッシとの差は“5センチ”だ」の意味は? 元イタリア代表デ・ロッシが語った“異才”と第2の人生【現地発】

2020年07月15日 クリスティアン・グロッソ

デ・ロッシが“愛した名手”たち

そのキャリアで様々な経験をしてきたデ・ロッシが愛した名手たちとは? (C) Getty Images

「メッシは抜きにして? それならマラドーナも省かないと。彼らは我々と同じスポーツをしているわけではないのだから」

 デ・ロッシは、一緒にプレーしたかったアルゼンチン人選手を挙げるうえで、リオネル・メッシが対象外になると言われ、そう強調した。そして、「彼らは次元が違う」と続け、自身が愛した名手たちを語った。

「リケルメのプレースタイルが好きだった。彼は世界のサッカー界における天才だったね。もう一人、私が愛したミッドフィールダーはレドンドだ。素晴らしい詩人だった。そしてベロン。彼はラツィオやインテルでプレーしていたから何度か対戦したことがある。私は若くて恐いもの知らずだったから、いつもベテランたちに歯向かっていった。きっと彼は、ピッチで喋りまくってうるさかった私のことを覚えているに違いない。

 ピッチでとにかくよく喋ったからね。恐いものなんかなかったし、若かったから誰にでも盾突いた。ベロン、キリ・ゴンザレス、アルメイダといったインテルのアルゼンチン勢に突っ込んで行ったものさ。でも、ベロンがレベルの違う選手だってことはわかっていたよ。

 そこから現在に話を移すと、偉大な選手と肩を並べる選手が一人いる。ディ・マリアだ。彼のことはいつも良い選手だと思ってきた。良い表情をしていて、人柄も良さそうだ。自分と同じスポーツをしている選手の中では、彼とアグエロが、最高の選手だ」

 もちろん、メッシと対戦したこともある。2018年4月、第1レグで1-4と大敗していたローマが3-0で逆転して、バルセロナをチャンピオンズ・リーグ(CL)から敗退させた時のことは誰もが覚えているだろう。
 
 あの日、PKから得点をマークしたデ・ロッシは、"クラック(天才の意)"を、独読な言い回しで語った。

「彼と同じピッチに立つことはある種のモチベーションだ。試合前に時折、チームメイトがメッシを感嘆のような目つきで見ているのに気づいたことがあった。私も同じように見ていたことはあるけど、そんな偉大な選手の前では自分の感情や弱さを見せないようにしていた。メッシからボールを奪うと、他の平凡な選手から奪うのとは、また違った感触があるものだ」

「メッシはこの15年間ずっと、彼と同じピッチに立てることを示すためだけに生きている人たちと対戦してきた。そのためにはかなり強いメンタルを維持してきたに違いない。サッカーのことで彼について説明することはもう何もない。表す言葉がないのだからね。

 ロナウドのように、ゴールやトロフィーの数で比較できる良い選手は他にもいるが、サッカーとは観ていて楽しいかどうか、ということでもある。私はメッシのプレーを観るのが好きだ。

 彼にとって唯一ラッキーだったのは、過去30年における最高のチーム、グアルディオラのバルセロナでプレーしたことだ。他のチームメイトたちも、メッシほどのレベルになくても、彼の横でプレーするだけの価値がある選手たちだった」

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