【FC東京】底辺からの逆襲なるか――33歳の石川が復活した羽生から学んだこと

2015年02月16日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

「ここから下がることはない。もう、上がるしかない」

昨季は不完全燃焼に終わった石川。巻き返しへの決意を秘めてシーズンに臨む。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

 2月15日の午後、FC東京はキャンプ地・宮崎で地元の子どもたち290人を対象にサッカークリニックを開いていた。軽いウォーミングアップに続いて行なわれたミニゲームでも、選手たちは子どもたちに混ざりながらボールを蹴っていたが、なかでも楽しそうにプレーしていたのがベテランの石川直宏だった。
 
「(宮崎でのサッカークリニックに)毎年来てくれる子の成長を見られるのは、楽しいですよね。向こうも僕のことを覚えてくれていて、今日は"インチキおじさん"と言われました(笑)。どうも何年か前に(ミニゲームで)インチキをしたらしく……。まあ、そういう積み重ねを確認できる場所です」
 
 たび重なる怪我(二度のヘルニアなど)に苦しんだ昨季は、J1でわずか3試合に出場しただけ。これまで積み上げてきたものをピッチで出しきれず、個人目標のひとつ──J1通算300試合出場(あと21試合)も達成できていない。
 
 チーム内の現序列では、ベンチ要員。いや、試合メンバー18人に入るのさえ難しいかもしれない。この日、子どもたちに見せた笑顔も"インチキ"なのではないかと疑ってしまうほど、石川は厳しい状況に置かれているはずなのだ。
 
 それでも、本人に「気負いはない」。
「レベルの低い話かもしれないですが、今季の目標はまずピッチに居続けること。たとえ練習でシュートが打てなくても、そういうコンディションでどう貢献できるかを考えながらプレーする。試合でもそうですが、インプットしたものを溜め込むのではなく、アウトプットするような作業を継続してやっていきたい。プロですから結果が一番大切ですけど、昨季までとは取り組み方というか、力の入れ具合が少し変わりました」
 
 冷静にそう語る33歳のベテランは、自分の立ち位置を正確に理解していた。
「正直、序列については僕たち自身も考えます。スタメン、ベンチメンバー、そのどちらでもない選手もいるわけですが、今の僕は底辺にいる。だから、良い意味で余計なものが剥がれた感じがしています。もちろんプライドはありますが、フラットな気持ちで勝負できている。ここから下がることはない。もう、上がるしかない、と」

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