【情報を武器に! 気になるギョーカイ最前線】 サッカー界のトレンド「GPS機器」 。その可能性は?

2020年07月02日 松尾祐希

気質が変わった現代っ子。なぜ彼らに数字が響くのか

プロフィール◆鹿内 幸治(しかうち こうじ)
帝京高・帝京大卒。サーフショップを経営しつつ、サッカー指導者として活躍する中、2018年に出合った「SPT」に、指導者としても、営業マンとしても可能性を感じ、同商品を販売する株式会社ジェイ・エスのアドバイザーに就任。アナリストとして数チームをサポートするかたわらで、講義・講演も行なっている。写真:茂木あきら(本誌写真部)

選手の試合中の走行距離や、心拍数などの状態を計測するGPS機器。プロはもちろん、大学や高校でも使われ始めている。サッカー界のトレンドアイテムは現場でどんな風に使われているのか、どんな効果をもたらすのか。国内市場での主力GPS機器のひとつ「SPT」で全国の名門校をサポートしている鹿内幸治氏に話をうかがった。
(サッカーダイジェスト7月9日号 別冊付録 「高校サッカー逸材300選」より転載)

 

――鹿内さんはSPTの販売アドバイザーであり、現役の指導者(昨年まで山梨の日本航空高校サッカー部GMを務める)でもあるわけですが、指導者の立場から、こういったGPS測定器を活用するメリットはどこにあると考えますか?

「小学校から社会人のチームまで、長年、サッカーの指導に関わってきましたが、良くも悪くも1995年頃から子どもたちの感覚が変わってきたと感じます。ネットが普及し始めて、個人で情報を直接得られるようになったタイミングですね。
 私たちの時代のように、要求に対して歯向かう子やとりあえず返事をしておこう、みたいな子はほとんどいません。納得しないと先に進めない、そんな現代っ子たちに何が響くのかというと、数字なんです」
 
――頭ごなしではなく、より具体的に伝えないといけないわけですね。

「なんで走ってないんだよ! と指摘するよりも、前半3キロしか走っていない。他の選手は5キロも走っているぞ! と発破をかけたほうが納得しますよね。体験会のような場で、SPTを試着してもらう時がありますが、いつも、どの学校でも、選手たちは驚くほど走ります!証拠が残るのでサボれない。これだけでも効果があると言えるのではないでしょうか」

――SPTではスプリント回数、走行距離以外にもさまざまな情報を確認できますね。分毎や時間帯別の走行距離やスプリント回数、ピッチのどこを走っていたかが把握できるヒートマップなど。なかでも重要なのはやはり走行距離でしょうか?

「ポジションによってその度合いは違いますが、走行距離は重要です。走っているチームのほうが、勝つ可能性が圧倒的に高いからです。プロレベルだと結果がひっくり返ることもありますが、高校レベルだと、100%に近い数字だと思います」

――Jリ―グでは試合後にトラッキングデータとして選手それぞれの走行距離とスプリント回数が公表されます。その数字と比較しやすいということもポイントですよね?

「わかりやすい目標・目安になりますからね。本田裕一郎氏(国士舘高校サッカー部テクニカルアドバイザー)が昨年度まで監督を務めていた流経大柏の部室にはJリーガーの数字が貼られていました。部員がそれと見比べ、目標とすることが成長につながったのではないでしょうか」

 
――ポジション争いの面でも、数字を比較できると、お互いにモチベーションになりそうですね。

「公平なレギュラー争いをうながすことにもつながります。自分が監督の時は、紅白戦で一番走っていた子を、レギュラーで使うこともありました。経験上、そういう頑張れる子がいると、チームが上手く回るということも分かっていましたからね」

 
――一方で、走れば良い選手、というわけでもないですよね?

「FWにとってはスプリントの回数のほうが気になりますね。高卒でプロに進んだ、あるストライカーの話ですが、監督は彼がよく顔を出すので、チームで一番走っていると思っていたようですが、実は8キロぐらいしか走っていないことが分かり、驚いていました。つまり、彼は効率良く走り、相手と駆け引きをしながらゴールを奪っていたわけです。映像からだけでは見えてこない選手の特長をあぶり出せるのもGPS機器ならでは。指導者のアドバイスの質も向上すると思います」

 
――数字を見れば、コンディションの良し悪しも把握できますね。

「おっしゃる通りです。データを蓄積することで選手自らの体調管理にも活かせますし、監督やコーチが選手の精神面、体調面の変化に気づくことがあるかもしれません」

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