【安永聡太郎】CL優勝を見据えるバルサが直面する「メッシ問題」。戦術をとるのか、エースをとるのか――

2020年06月28日 木之下潤

メッシに求められるのは「勝利に直結する仕事」

絶対的な存在であるメッシだが、CLのタイトルを獲るためには解決しなければならない問題も。(C) Getty Images

 シーズン途中で監督に就任したキケ・セティエンにとってタイトル獲得は非常に大きな結果です。バルセロナの最大の目標はチャンピオンズ・リーグ(CL)の優勝なので、彼がこのまま指揮する時間を延ばせるかどうかは、このタイトル獲得にかかっている、といっても過言ではありません。

 ただ、そのCLでの戦い、さらにはこれから数年というスパンでチームを見つめると、やはり「メッシ問題」から目をそらすことはできません。

 なぜならリオネル・メッシが影響力を及ぼせる範疇の相手、つまり格下なら数多くのゴールやチャンスを生み出せますが、対戦相手のレベルが上がるほど影響力を発揮できる領域が狭まるため、マイナス面が浮き彫りになるからです。特にバルサの場合は、守備面でメッシの代わりに動ける選手が必要になります。

 CLを勝ち上がってくるトップ・トップの相手に対しては、メッシですらプラスαを出せる領域が少なくなりますし、どうしてもその運動量の少なさを補填する選手との組み合わせが必須になります。

 つまり、チームとして「メッシのプラスαの発揮どころ」をどこにするか定めない限り、僕は「CLのてっぺんには上り詰められない」と思っています。
 
 メッシのプラスαが「勝利につながる仕事」であるのは間違いありません。彼がゴールを奪えなかったとき、効果的な攻撃を演出できなかったときはチームが通常時の試合とは別展開になるのは必然です。その分、別の機能が働かなければ勝利が見えてきません。

 残念ながら現在のキケ・セティエンは"ベター"なチームづくりにとどまっていて、ベストなチームづくりにはたどり着いていません。攻撃時の基本システムとして「2-1-4-1-2」というメッシとセルヒオ・ブスケッツをひし形の頂点と底辺に据えた今のバルサでは、ベターな「再現性」は生み出せていても、メッシ以外の選手たちでゴールを奪い切るところまでには至らない。再現性を生み出そうとすると、現代サッカーにおいてポジショナルプレーは大切なポイントです。

 自粛期間中、さまざまな本を読んで勉強しましたが、プレーエリアの制限はポジショナルプレーを実践する上で必要不可欠な条件です。その代わり、プレー機会が回ってきたときは100%の力を発揮することが大事なポイントです。バルサの攻撃には立ち位置をある程度守る我慢が必要で、メッシも右サイドに張っているシーンもありますが、若い頃のような推進力を現在は発揮できるわけではありません。

 ロナウジーニョがいた時代、彼が左サイドで作り出したタメ(時間)がある状態でメッシにボールが回ってきたときにグイグイとボールを前進させていました。しかし、今はすでに33歳です。あの時代のように1対1でどんどん抜け出していく姿をメッシに求めてはいけないんです。
 

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