「カマダの才能は本物だよ」フランクフルトサポーターも待ち望んだ、鎌田大地の“覚醒”【現地発】

2020年06月21日 中野吉之伴

「ボールを持つ感覚は、今も昔も変わっていない」

ブンデス初ゴールを決めてからブレークした感のある鎌田。(C)Getty Images

 ブンデスリーガ第31節ヘルタ・ベルリン戦で、鎌田大地がみせたドリブルからのアシストは、ただただ素晴らしかった。フランクフルトのアディ・ヒュッター監督は「まるでオーストリアの本当に優れたスキー選手のようだ」とそのスラロームの優雅さに賛辞を送り、守護神ケビン・トラップは「ドリブルで仕掛けられるクオリティを持っている選手だ。確かな何かを持っている。違いを生み出すことができるんだ」とその存在感を高く評価していた。

 今季は開幕からコンスタントに出場機会を勝ち取っている鎌田は、ヨーロッパリーグ(EL)のアーセナル戦で2ゴール、ザルツブルク戦では3ゴールを挙げるなどカップ戦では得点を量産している一方、なかなかブンデスリーガでのゴールが生まれなかった。専門誌による採点でしばらく低い評価が続いた時期もあった。「リーグではだめなのか?」そんな声もなかったわけではない。

 それでも僕が見続けている鎌田は、一度も焦りを見せたりすることはなく、今のプレーを続けていけば、必ず決まると信じ続けていた。自分の感覚への確かな自信。それはドイツに来た当初から見失うことなく、持ち続けていたものだった。
 
「去年も一昨年もそうですけど、僕の感覚的には別にサッカーのプレー自体はそこまで通用してなかったとは思っていない。若かったし、身体も少し線が細かったり、まだ少し弱かったり。そういうところはみんなに言われていたし、監督にも言われていた。ただ、この2年である程度は改善できたと思う。でも、ボールを持ったところは、今も昔もそんなに変わらないと僕は思っている」

 フランクフルトは新型コロナウィルスの影響による中断を挟んで連敗に苦しんでいた。3バックから4バックの変更ですべてが好転したと思っていたのが、すべての歯車がまた急に逆回転し始めていた。

 流れを変えるために、ヒュッター監督は28節フライブルク戦で長谷部誠をセンターに置く3バック+2トップ+トップ下に鎌田という布陣への変更を決断。これが功を奏した。鎌田はこの試合で初ゴールをマークすると、続くヴォルフスブルク戦でも決勝点をマーク。ヘルタ・ベルリン戦でのスーパーアシストを決めた翌節シャルケ戦でも、アンドレ・シウバの先制ゴールを見事にアシスト。もはや攻撃の軸として替えの効かない選手になっている。

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