「そんなことやってるから勝てないんだ、と言われて…」伊藤宏樹氏が語る“サッカーとファンサービスの両方で魅せる”川崎のいま

2020年06月14日 手塚集斗(サッカーダイジェストWeb編集部)

地域貢献度で10年連続1位に

クラブの苦しかった時代を知る伊藤氏に、強豪と言われるまでに上り詰めた現在の川崎について話を伺った。(C)SOCCER DIGEST

 現在「DAZN」では、新型コロナウイルスの影響で試合を見られないファン・サポーターに向け、過去の名勝負を放送する「Re-Live」が配信中だ。「サッカーダイジェストWeb」では2006年の最終節、川崎フロンターレ対セレッソ大阪の解説を務め、現在は川崎の強化部に所属する伊藤宏樹氏にインタビューを実施。J1リーグでクラブ史上最高の2位に輝いた2006年シーズンをきっかけに、毎年のように上位に食い込み、2017、2018年に2連覇を達成するなど、強豪に上り詰めた現在のフロンターレについて話を伺った。
 
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――川崎といえば攻撃的なパスサッカーですが、現在のスタイルをどう見ていますか?
 
「常に攻撃的という括りで見られてきたチームですけど、風間(八宏)さんの就任がひとつのターニングポイントで、今のサッカーに繋がっていると思います。それから優勝するまでには時間がかかりましたが、生え抜きの選手を中心に、選手の成長と補強の仕方がうまくいったのだと思っています。
 
 また地域への貢献も両立してやってきました。川崎は地域貢献度のアンケートでも10年連続1位なんですよ。これってもしかしたら優勝することより重要なことかもしれないですよね。それぞれのクラブに考え方はあると思いますけど、現場だけではなくクラブとしてサポーターとともに長年取り組んできた一つの成果なんですよね。クラブの価値、選手の価値というのはやっぱりサポートしてくれる人がいてこそですから。"サッカーとファンサービス両方で魅せる"そういうクラブになれているのかなと」
 
――現役を引退されてから、まず川崎の集客プロモーション部に入られました。どのような思いからでしょうか。
 
「そこまでちゃんと考えていたわけではないですけど、サポーターやスポンサーの気持ちを知りたかったですし、選手だった自分がそこに入ったら面白いだろうなって。チャレンジャー精神ですかね」
 
――クラブが地域密着を意識したのはいつからなのでしょうか?
 
「2000年にJ1に昇格したんですが1年で落ちて、地域に根差さないと駄目だろうと言われだしたのがその時期でした。僕や(中村)憲剛が入団した時は、商店街でイベントをしても、お客さんよりスタッフの方が人数が多かったり、そういう時代でした。それから考えたら、コツコツやってきて今に繋がっている。こういったクラブのカラーというものは、ずーっと引き継がれていくし、次の世代に繋がっていく。クラブとしては良いサイクルになってると思います」
 
――いまではホームの等々力競技場は毎試合のようにほぼ満員です。ただ、そうなるまでには相当な苦労があったのでは?
 
「そうですね。サッカーに興味を持っていない人も巻き込むために、色んな手法でアプローチをしました。今はフロンターレのサッカーが好きで見に来る人が増えて、選手としてはありがたい限りですよね。魅せるサッカーと勝つサッカーというのを同時に体現するのって難しいと思うんですけど、でもそこを目指してやっているっていうのが今のチームだと思いますね」

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