【J再開後の注目株|徳島】「あの1本が入っていれば…」昨季の悔しさを誰よりも知るボランチの雑草魂

2020年06月04日 柏原敏

J1昇格は「『絶対にする』って決めています」

昨季、シーズン終盤に定位置を確保した鈴木(23番)。昇格プレーオフの決定戦では先制点を奪った。(C)SOCCER DIGEST

 昨季、徳島はJ1参入プレーオフの決定戦まで進出したが、湘南に1-1と引き分けて昇格には一歩届かず。今季はその悔しさを胸にスタートを切った。筆者がそんな徳島を取材するなかで、最も心を揺さぶられた選手がいる。ボランチを主戦場にシャドーでもプレーする鈴木徳真だ。

「全員で1位、2位を目指して、J1に昇格したいと思っています。いや、思っていますと言うか、『絶対にする』って決めています」

 そう語る鈴木を、普段の飄々とした振る舞いや自身を客観視できるあたりから論理的な人物だと勝手に思っていた。しかし、試合では喜怒哀楽を爆発させる感情的な人物で、イメージとは対照的。一般的に対極と考えられる性格が同居しているのだ。それが1年間、取材して抱いた印象で本人にその話を振ってみると、こう答えた。
 
「心の中は情熱しかありません。心は熱く、頭は冷静にと思っているので。負けたくないのは心だし、プレーは頭から神経回路を伝って感覚的にしていると思う。俺の心の中は雑草魂。僕は街クラブで育って、高校と大学は名門に行かせてもらいましたが、いずれにせよ『こいつには絶対負けたくねえ!』というハングリー精神でやってきた。劣等感をではないですけど、比較されて周りのほうが上手いと言われてきて『ムカつくな。絶対負けねえ』と思っています」

 コメントで一人称は「俺」と「僕」が混在し、表現方法も論理的だったり感情的だったりと、"複数の鈴木徳真"が汲み取れる。惹かれるのは、どういう人物なのか知りたい、という好奇心をくすぐられるからか。
 

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