【日本代表 隠れ名勝負】ジダンの美弾を超えるゴラッソ!世界王者を追い詰めたC大阪の凸凹コンビ

2020年05月31日 飯尾篤史

短期連載コラム『日本代表 隠れ名勝負』vol.5 トルシエジャパンのフランス戦|ジダンと西澤が華麗なゴラッソ競演!

2000年に行なわれた一戦で西澤(左)はジダン(右)以上にインパクトのあるゴールを決めた。(C) SOCCER DIGEST/Getty Images

ワールドカップやアジア最終予選、アジアカップやコンフェデレーションズカップといったメジャーな大会ではなく、マイナーな大会や親善試合においても日本代表の名勝負は存在する。ともすれば歴史に埋もれかねない"隠れ名勝負"を取り上げる短期集中連載。第5回は2000年、トルシエジャパン時代のフランス戦を振り返る。(文●飯尾篤史/スポーツライター)

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 百戦錬磨の大男たちが、呆然と立ち尽くしている。ブランが、ヴィエラが、信じられないといった表情で、ゴールを見つめている。

 世界王者のフランスにひと泡ならぬ、ふた泡も吹かせたのは、終わったばかりのJ1第1ステージで最後の最後に涙をのんだセレッソ大阪の凸凹コンビ、西澤明訓と森島寛晃だった。

 2000年6月、トルシエジャパンはカサブランカにいた。開催国のモロッコ、フランス、ジャマイカと争うハッサンⅡ世国王杯に出場するためである。

 日韓ワールドカップまで、あと2年――。トルシエとの契約が6月いっぱいで切れるため、この大会とキリンカップの計4試合は、契約延長か否かを決める審判の場だった。

 98年9月に日本代表監督に就任したトルシエは、U-20日本代表を率いた99年のワールドユースでは準優勝の金字塔を打ち立てたものの、A代表ではこれといった結果を残せていなかった。

 99年7月のコパ・アメリカでは1分け2敗と惨敗。9月にはイランと1-1、2000年3月には中国と0-0、4月には韓国に0-1で敗れ、アジア相手にも勝てない有様だった。

 果たして、トルシエは自国開催のワールドカップを任せるに足る人物なのか――。

 その判断を下す6月シリーズ初戦の相手が、あろうことか世界王者なのだ。トルシエの不運を思わせる巡り合わせだった。

 ところが、ゲームは予想外の展開を見せる。

 先手を取ったのは、日本だった。34分、リザラズのクリアミスを拾った稲本潤一が柔らかいパスをゴール前に送り込む。そこに走り込んだのは、森島だった。追走するデザイーに捕まる前にフィニッシュへと持ち込むと、一度はGKバルテズに弾かれたものの、自ら頭でプッシュして先制ゴールを決める。

 60分にはプティのフィードで抜け出したジダンがワンタッチでGK楢崎正剛の頭上を抜き、落ちてきたボールを左足アウトサイドで流し込む華麗な同点ゴールを披露したが、9分後には、それ以上に華麗で、芸術的なゴールが飛び出した。

 三浦淳宏が左サイドで何度も切り返し、ファーサイドにクロスを放り込む。そこに西澤が走り込んでくる。右足インステップで豪快に叩いたボレーがフランスゴールを撃ち抜いた。

次ページ母国を相手に堂々たる戦いを繰り広げたドルシエは胸を張った

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