「関係者8人の陽性は取るに足らないと言うが…」 ラ・リーガの“帰還”はアポロ13号の如く困難なミッションだ【現地発】

2020年05月23日 エル・パイス紙

テバス会長は「自宅にいたほうがその可能性が高い」とも

マドリーの主将S・ラモス(右)らは早期の再開を歓迎したが……。(C) Getty Images

 社会活動の再開に向けて、リスクを負わなければならないのは、フットボーラーたちも同様だ。未知のテリトリーへの挑戦はまだ始まったばかりで、相当なストレスが伴うことが予想される。

 彼らはスポーツ界の復興の牽引役としての期待を担うとともに、再開に向けての取り組みは実験的な意味合いもある。その一挙手一投足にはこれまで以上に注目が集まることになりそうだ。

 すでにラ・リーガは1部と2部の選手、関係者に検査を実施。対象2500人に対し、8件の陽性反応があったと発表された。しかしスペイン・プロリーグ機構(LFP)のハビエル・テバス会長は、これを取るに足らない数字であると明言。さらにリーガが再開してからも選手たちに対し、試合前に検査を義務付ける構想を示し、「もしリスクがあるというなら、自宅にいたほうがその可能性が高い」とまで言い切った。
 
 ジェラール・ピケ(バルセロナ)、セルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)、コケ(アトレティコ・マドリー)、ミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)の4選手はテバスと一緒に出演した「モビスタール・プルス」の番組において、早期の再開を歓迎するとともに、ラ・リーガが用意した感染防止のプロトコルに対して疑問を呈することはなかった。

 車での単独移動、練習後ロッカールームでシャワーを浴びないままの帰宅、少人数での練習、隣の選手との2メートルの距離の維持など様々な制限が課されているが、協力的な姿勢を示している。

 ただ、いうまでもなく危機は終わってはいない。ウイルスの恐怖はすぐそこにあり、専門家はリスクの高さを繰り返し訴え続けている。また例えば、感染者数、死者数ともスペインと大差のないフランスは政府の方針に従いすでにリーグ戦の打ち切りが決定している。あるいはプロトコルの遵守が困難という理由で、女子のトップリーグのラ・リーガ・ イベルドローラも同様の決断を下している。

 そんななか、ラ・リーガが再開に踏み切るのは、それだけスペインのスポーツ界において彼らが担う役割が大きいからに他ならない。期待されるのはコロナという凄まじい雨をはじき返す巨大傘のような役回りだ。すでに政府とは2億ユーロ(約250億円)を各競技団体に寄付することで合意している。
 

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