現地識者が選ぶセリエA過去20年のベスト11「バロンドール受賞者3人が外れる豪華な顔ぶれ」

2020年05月16日 片野道郎

中盤で絶対に外すわけにいかないのは――

片野氏が選出した過去20年のセリエAベスト11。(C) Getty Images

 足かけ20年という長い期間を対象にベスト11を選ぶというのは、本来ならばかなり難しい作業だ。しかしことセリエAに話を限れば、選出にそれほどの迷いはなかった。

 理由はシンプルだ。セリエAが欧州5大リーグの中でトップを争う競争力があったのは2000年代末までで、2010年代はセリエAを活躍の舞台とするワールドクラスが大きく減少した。それゆえ候補の大部分は2000年代にキャリアのピークを過ごした選手に限られ、人数的にもかなり絞り込めたからだ。だからといって、このベスト11のクオリティーが他のリーグと比べてまったく見劣りしないのは、見ていただければわかるだろう。

 GKは文句なしでジャンルイジ・ブッフォン。2000年代を通して世界ナンバーワンGKの座に君臨し、その座をマヌエル・ノイアーに譲ってからも、アリソン、エデルソン、ティボー・クルトワといった新世代が台頭するまでトップ3に留まり続けた。

 CBは、純粋なDFとしては史上唯一のバロンドールに輝き、古き良きカテナッチョの伝統を体現した最後のストッパーであるファビオ・カンナバーロ、エレガントな身のこなしにパワーとスピードを兼備し、今ならフィルジル・ファン・ダイクに匹敵する圧倒的な対人能力を誇ったアレッサンドロ・ネスタで決まり。カルチョが個としても組織としても鉄壁の守備を世界に誇った時代を象徴する偉大なペアである。

 右SBは暴力的な攻め上がりと無尽蔵のスタミナを誇るフィジカルモンスターだったマイコン、左はパオロ・マルディーニと迷ったものの、両SBとボランチを自在にこなすマルチロールで、「偽SB」のはしりと呼ぶべきプレースタイルの持ち主だったハビエル・サネッティを選出。ともにカルチョが国際舞台で最後の輝きを放った「モウリーニョのインテル」を支えた主役である。
 
 中盤で絶対に外すわけにいかないのは、2000年代のセリエAを代表する「アンチェロッティのミラン」、10年代を支配した「コンテとアッレーグリのユベントス」の両方で絶対的な司令塔として君臨したアンドレア・ピルロ。「10番」として育ったファンタジスタが中盤に下がってレジスタとして新境地を拓くケースは今では珍しくないが、そのパイオニアと言うべき存在だった。長短のパスを駆使してプレーの展開とリズムを支配するゲームメイク能力にかけて、彼を超える存在は今も現れていない。

 そのピルロがピルロたる上で絶対不可欠な補完役だったのがジェンナーロ・ガットゥーゾだ。運動量と献身性によってチームに攻守のバランスを保証するインコントリスタ(守備的MF)は、いまや珍しくなってきたが、2000年代から2010年代半ばまでのカルチョにおいては必要不可欠な存在であり、ガットゥーゾはそのシンボルだった。

 この2人と並んでイタリアを代表するMFがダニエレ・デ・ロッシ。攻守両局面で中盤に大きな実質をもたらす万能タイプとして長年に渡ってローマの中軸であり続けた。世界的な評価がそれほど高まらなかったのは、アカデミーからローマ一筋のキャリアを過ごしたがゆえに、チャンピオンズ・リーグ(CL)という国際舞台で活躍する機会が少なかったからでしかない。
 

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