【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「チェルチとの定位置争いは現時点で本田が有利」

2015年01月28日 マルコ・パソット

悪夢のようなアジアカップを終えた本田を待つ、新たな悪夢…。

大きな悔いを残したアジアカップでの本田だったが、昨夏もワールドカップでの不振をバネにミランで活躍してみせた。再度のリベンジは見られるだろうか!? (C) SOCCER DIGEST

 これからもずっと残っていくシーン――。
 
 アジアカップでのPK失敗を本田圭佑はそう語った。ピッチで起こる悲劇は、時に道理や理論だけでは説明しきれない。そのことを本田は強く感じていただろう。そしてミランに帰ってきてもまた、残念ながら本田はそれを再確認せねばならない。
 
 今、ミランは終わりの見えないトンネルを進んでいる。試合を重ねるごとに深まっていく悪夢……そう、まさに悪夢という表現がふさわしい。アジアカップ敗退の悪夢の後、本田を待っているのは、また新たな悪無だ。今のミランは、かつての栄光も感じられない、ヨーロッパリーグ出場権さえも手に入れることが危ういチームになってしまった。
 
 ワールドカップ、ミラン、そして今回のアジアカップと、本田にとってこの1年は、本当に散々だったと言っていいだろう。できるだけ早く代表チームでの傷心を癒すべくミラノに帰ってきたのであろうが、しかしミランは本田に、これまで以上の混乱を与えることだろう。
 
 なぜなら今、ミランにはアレッシオ・チェルチがいる。昨夏からフィリッポ・インザーギ監督が欲しがり、この冬のメルカートでやっと手に入れることができた選手だ。インザーギ監督は、このアタッカーを非常に高く買っている。
 
 とはいえ、もし未来を見通せる水晶があって、本田がこれほど早くオーストラリアから戻ってくるとあらかじめ分かっていたのなら、ミランは今冬の獲得には動かなかっただろうと言われている。
 
 しかし、アドリアーノ・ガッリアーニ副会長は、1月いっぱいは本田が不在になると確信していた。アジアカップでは、日本が必ず決勝まで勝ち上がると信じて疑わなかったからだ。だから、移籍市場が開くとすぐに、チェルチを獲得したのである。
 
 そしてチェルチは、昨夏にアトレティコ・マドリーに移籍したものの、出場機会が少ないことに不満を持っていたため、すぐにこのオファーを快諾した。
 
 しかしこの補強をもってしても、ミランの勝利には繋がらなかった。唯一の明るいニュースはコッパ・イタリア戦でサッスオーロに勝利したことぐらいで、リーグ戦では1941年(1月の成績は3分け1敗)以来、これほどひどい年明けはないというくらいの惨状だ。
 
 よって、チェルチ加入のインパクトはそれほど強いものではないが、それでも本田にとって、このイタリア代表FWの存在はあまり歓迎できるものではないだろう。とにかくインザーギ監督はチェルチを高く評価しているし、何より右サイドアタッカーとしてポジションが本田と完全にかぶるのだ。
 
 ただ、本田には大きなアドバンテージがある。それは、みずからを犠牲にできる精神だ。本田は守備にも大いに貢献することができる。その点、チェルチにはそういった気持ちが見られず、それが彼の短所でもある。
 
 同じく右サイドのエムバイ・ニアングはジェノアに移籍した今、これからミランの右サイドでは、本田とチェルチによる熾烈なポジション争いが繰り広げられるだろう(もっとも、ニアングは元々、本田のライバルではなかったが……)。

次ページ献身的な姿勢、連係、コンディション…本田が優位な点は多い。

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