「乾貴士の登場でもはや“鬼門の地”では…」スペイン人記者が見たラ・リーガの歴代日本人選手【現地発】

2020年05月10日 アレハンドロ・アロージョ

大久保のマジョルカ1年目を除けば…

(左上から時計回りで)久保、乾、中村、大久保。リーガの新旧日本人プレーヤーだ。(C)Getty Images

 ラ・リーガにおける歴代の日本人選手を評価するうえで、分岐点となったのが乾貴士だ。

 1990年代後半から日本人として初めてラ・リーガ1部の舞台に立った城彰二(バジャドリー)を筆頭に、西澤明訓(エスパニョール)、大久保嘉人(マジョルカ)、中村俊輔(エスパニョール)ら代表クラスの選手が次々にスペインに上陸したが、いずれも適応力、あるいは実力不足を露呈した。

 日本市場へのマーケティング効果も含めたエキゾチックな話題ばかりがクローズアップされ、2004年の1月に加入して3ゴールを挙げて残留に貢献した大久保のマジョルカ1年目を除けば、ピッチ上で残したインパクトは薄かった。むしろ福田健司や指宿洋史といった2部以下のカテゴリーでプレーした選手のパフォーマンスのほうが目立っていたほどだ。

 こうした経緯が重なり、一時ラ・リーガの各クラブは日本人選手の獲得に二の足を踏む状況が続いていた。サムライたちにとって、スペインはいわば鬼門の地だったのだ。
 
 しかしそんな中でも、日本代表はワールドカップに出場し続け、ブンデスリーガをはじめ欧州で活躍する日本人選手の数が年々増加していた。グローバル化の波も追い風に日本サッカーが確実に成長していた証であり、その流れに乗って2015年夏にブンデスリーガ経由でエイバルに入団したのが乾だった。

 入団当初こそそれまでの日本人選手と同様に守備の献身性やディシプリンといった泥臭さという部分での貢献のほうが目立っていたが、試合を重ねるにつれてチーム戦術への習熟度が進み、攻撃面でも存在感を発揮。3シーズンに渡って中心選手として活躍した。

 ベティスではノーインパクトに終わったが、昨冬に移籍したアラベスでも持ち味を見せ、サイドアタッカーとしての実力はラ・リーガでも上位の部類に入ることを証明した。日本代表でエースだった城や10番を背負った中村でさえぶつかった壁を、小柄なドリブラーが打ち破ったのである。

 出戻りとなった今シーズンは、最初の在籍に比べてパフォーマンスは落ちている。ただこれは16位という順位が示すようにチーム全体の機能性の低下とも無関係ではない。ペナルティーエリア角付近でボールを持ってドリブルから決定機を演出する、あるいは中に切れ込んでファーサイドに巻いたシュートを放つという十八番のプレーは、まだまだ通用するはずだ。
 

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