「諦めたら終わりだろ…」苦境にあった元アーセナル戦士が浅草のファミレスで語った“本音”【取材記】

2020年05月08日 羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb)

“渦中の人”と雷門の前で待ち合わせ

インタビューの前に観光をしたいと言い出したエブエ。浅草寺での一枚だ。 写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 忘れられない取材がある。

 今から約3年前の秋のこと。筆者は、有名選手へのインタビューに向けて少し緊張していた。元アーセナルのエマヌエル・エブエに話が聞ける機会を得ていたからだ。

 取材の機会は突然舞い込んだ。アーセナルの公認ファンクラブ『アーセナルジャパン』の15周年記念パーティーのために来日するため、サッカーダイジェストで取り上げて欲しいと依頼されたのだ。

 当時のエブエは、ちょうど日本でも話題になっていた。というのも、来日の約1か月前、キプロスの強豪アポロン・リマソルのメディカルチェックに合格したにもかかわらず、突如として入団を拒否されたというニュースが駆け巡っていたからだ。
 
"渦中の人"となっていた元コートジボワール代表DFと落ち合う場所は浅草だ。彼の来日をサポートしたコーディネーターさんと連絡を取りつつ、東京の一大名所とも言える浅草寺の「雷門」の前で待つことにした。

 そして、待ち合わせの時間から約5分過ぎた頃、前日にユニクロで購入したというダウンジャケットを着こんだエブエが現われた。

 かつてアーセナルで、あの名将アーセン・ヴェンゲルの薫陶を受けた名手と雷門の前で対面する――。なかなかないシチュエーションだが、「やるしかない」と決意し、いざ取材に挑もうとした。すると、エブエが「少しこの辺を見て回りたい」と言い出したのだ。

 時間も限られていると事前に聞いていたため、少なからず焦りはあったが、平静を装って、観光を了承した。そして、同行していたカメラマンにエブエの様子を撮ってもらいながら浅草寺を見て回った。

 20分くらい経った時だった。もう気が済んだのか、突然「さぁいつやる?」と切り出してきて、インタビューを始めることになった。場所は、駅前のファミレスだった。

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