香川、岡崎、稲本、中田…イングランドでプレーした歴代日本人選手のリアル評は? 英国人記者に訊く【現地発】

2020年05月05日 松澤浩三

香川はファーガソンが勇退さえしていなければ…

香川(左上)、中田(右上)、稲本(左下)、岡崎(右下)をはじめとするイングランドでプレーした日本人を英国人記者が評価した。 (C) Getty Images

 日本人選手がヨーロッパの舞台で活躍するようになって久しい。サッカーの"母国"イングランドでも、何人もの和製の名手たちが奮闘してきた。

 世界中から選りすぐりのスターが集う熾烈なリーグで、サムライ戦士たちはいかなる印象を与えてきたのか――。経験豊富な英国人記者に訊いた。

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 イングランドへやってきた歴代の日本人選手の中で、最も筆者の印象に残っているのは香川真司である。『The Guardian』のマンチェスター番として、ユナイテッドをカバーするのは義務であるため、彼がこの地にやってきた時のことはいまだによく覚えている。

 香川はおそらく、英国へやってきた日本人の中では、フットボーラーとして能力が最も高かった選手だ。

 サー・アレックス・ファーガソンが引退する前の最後の夏に獲得し、2012-13シーズンのリーグタイトル奪取に貢献。その広い視野とインテリジェンスの高さは、ファーギー(ファーガソン監督の呼称)も評価していただけに、このスコットランド人指揮官が勇退していなければ、チームの中心で活躍し続けたはずだ。

 ホームデビューを果たしたフルアム戦での初ゴールも記憶にあるが、ノーリッジ戦で、香川が鮮烈なハットトリックを決めた際の日本人記者団の興奮ぶりは。忘れようにも忘れられない(笑)。

 アジア人選手としては、プレミアリーグで初のハットトリックをやってのけたのだから、それもそうだろう。しかも、"最低でも当時は"世界有数のクラブだったユナイテッドの赤いシャツをまとっての偉業だった。

 優勝を決めたアストン・ビラ戦でも先発フル出場して活躍した香川は、ファーギーが監督としてのラストマッチとなったWBA戦でも5-5の乱打戦のなかゴールを決め、存在感を発揮している。
 

 しかしながら、翌シーズンに稀代の名将の後を受けてチームの指揮を執ったデイビッド・モイーズは、シーズン序盤から迷走し続け、香川を使いこなせなかった。そして1年ともたずに解任されたモイーズの後任となったルイス・ファン・ハールは香川を戦力とも考えず、就任から数か月で放出した。

 個人的には、もう少し香川を見たかった。彼にとっては、入団のタイミングが悪く、不運だったと言えるかもしれない。その一方で、同時期にフランスからプレミアリーグにやってきたエデン・アザールが長らくチェルシーで活躍し続けたことは興味深い。

 当時、ユナイテッド・ファンは両者を比較して、「チェルシーは大枚を叩いてアザールを買ったが、我々のクラブはより素晴らしいシンジを3分の1の移籍金で手に入れた」と浮かれていたが、結果を見ればどっちの選択が正しかったかは一目瞭然だ。

 今年3月で31歳になった香川が、イングランドを不完全燃焼のままに去ったのは間違いない。プレミア復帰の噂が囁かれることもある。しかし、だ。仮に戻ってきても活躍するのは難しいと感じているのは筆者だけではないだろう。

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