森保ジャパン再検証<ボランチ編>指揮官が絶大な信頼を寄せる柴崎岳。依存度が高まるなか理想の組み合わせは?

2020年04月30日 元川悦子

森保新体制スタートのコンビは柴崎・遠藤。指揮官が大黒柱に据えたのは…

日本代表のボランチの座を争う選手たち。左上から時計回りに、橋本、柴崎、遠藤、田中、大島、山口。写真:サッカーダイジェスト写真部

 2018年9月に発足した森保一監督率いる日本代表は、2019年のアジアカップ(UAE)やコパ・アメリカ(ブラジル)を経て、2022年カタール・ワールドカップ・アジア2次予選の戦いに突入した。その後、国際Aマッチは新型コロナウイルス感染拡大の影響で、現在はストップしている状況にあり、今後どうなるのかまだ先は見えない。いずれ来る活動再開に向けて、森保監督がこれまで、どのようにチーム強化を進めてきたのか、ポジションごとに検証していく。(文●元川悦子/フリーライター)

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 2018年のロシア・ワールドカップを最後に、8年間キャプテンマークを巻いた長谷部誠(フランクフルト)が去り、日本代表ボランチ陣のポジション争いは混沌とした状況だ。

 森保ジャパン発足に当たり、ロシアで異彩を放った柴崎岳(ラコルーニャ)、2014年ブラジルから2大会連続で世界舞台に参戦した山口蛍(神戸)、ヴァイッド・ハリルホジッチ(現モロッコ代表監督)・西野朗(現タイ代表監督)両指揮官に高く評価された大島僚太(川崎)や井手口陽介(G大阪)らが候補者として残ったが、2018年9月の初陣・コスタリカ戦(吹田)で選ばれたのは柴崎と遠藤航の同級生コンビ。92年度生まれのプラチナ世代で、育成年代からともに日の丸を背負ってきた2人は息の合った連係を見せ、非常にポジティブな印象を残した。

 そこから2019年1~2月のアジアカップ(UAE)までは彼らがファーストチョイスと位置付けられた。柴崎の高度な戦術眼と洗練されたパスセンスとゲームメイク力、遠藤航のボール奪取力とハードワーク、ベルギーで磨きをかけたビルドアップ能力がうまくマッチし、2人のコンビには安定感が見て取れた。大会途中までリーダーシップを発揮した青山敏弘(広島)の好サポートもあり、彼らは伸び伸びとプレーできたことだろう。


 しかしながら、青山と遠藤が立て続けに負傷離脱し、最重要マッチだった決勝のカタール戦(アブダビ)で柴崎は塩谷司(アル・アイン)と初めてのコンビ形成を余儀なくされてしまう。攻守両面でのギクシャク感は否めず、その隙を相手に突かれ、日本はまさかの3失点。2大会ぶりのタイトルを逃し、彼らは大きな屈辱感を味わった。

 それでも、森保監督の中では「柴崎を大黒柱に据える」という意思がより強く固まった様子だった。当時、柴崎は所属のヘタフェで出場機会を得られない苦境に陥っていたが、指揮官は真っ先にスタメンに抜擢。昨年6月のコパ・アメリカ(ブラジル)でもキャプテンマークを託し、練習中にもしばしばマンツーマンで意見交換する姿を見せていた。

「私が広島の監督をしていた時、鹿島の柴崎には何度も痛い目に遭わされた」と指揮官は語ったことがあったが、現役時代の自身と同じボランチではあるものの、タイプ的に真逆とも言える華麗さがウリの彼に、特別な感情を抱いているようにも見受けられた。柴崎が長谷部のような絶対的な存在になってくれれば――この先の日本代表を牽引してほしいという期待も込めて、こうした扱いをしたのかもしれない。
 

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