【日本代表 本誌論評】6月のW杯予選開幕まで時間はない。協会は一刻も早く明確な姿勢を示すべきだ

2015年01月24日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

香川の能力を最大限に活かせなかった結果……。

UAE戦でPKを外し、天を仰ぐ香川。この背番号10の能力を最大限に活かせなかったアギーレ監督の采配には疑問符が付いた。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 グループリーグで3戦全勝しながら、1996年大会以来となる準々決勝敗退を喫した今回のアジアカップで、なにより顕著だったのが決定力不足だろう。

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 UAEとの準々決勝では、確かに守備陣も良くなかった。よくもあんな"綺麗に"縦パスを通されるものかと怒りさえこみ上げてきた。一度ならず、二度も最終ラインを引き裂かれ、挙げ句の果てに失点しているのだ。「油断」のひと言では済まされない失態である。
 
 しかし、それ以上に酷かったのが攻撃面だ。UAEのマークはそこまで厳しくなく、対人に滅法強いDFもいなかった。前半の途中から日本がボールを支配し、敵のエリア内に数え切れないほどボールを運びながらも、終わってみれば延長を含めた120分間でゴールネットを揺らしたのはわずかに1回。それも、"エリア外"からの柴崎のミドルで、である。
 
 惜しいチャンスをいくつか逃した本田も、UAE戦の敗因をこう述べている。
 
「勝負を決する場面がいくつかあった。そこで決められずにPKまで行って負けてしまったのは、なにかしら自分たちに責任があると受け止めざるを得ない。追加点を取ってPK戦までに試合を決められなったことには、なにより悔いが残る」
 
 シュート精度の低さはもちろん、形にこだわり過ぎた点もいただけない。フィニッシュに持ち込んでいい場面でも、余計なパスやドリブルを1、2本入れてスローダウン。速さも怖さもない日本の攻撃は、相手にとってどちらかと言えば読みやすかった。
 
 事実、この日のUAEもサイドではある程度日本の選手をフリーにしても中は締めていた。エリアの外でこねくり回されているぶんには構わない、中に入ってきたところで潰せればいいと、そんな割り切った守り方をしていた。日本には決定機と呼べるチャンスこそあったが、「超」が付くほどのそれはなく、決定力不足というよりも、攻撃のアプローチそのものに大きな問題があったように見えた。
 
 ノーゴールに終わった乾、結果的に1点止まりだった岡崎以上に、今大会の4試合でオフェンス面において最も足を引っ張ったのが、インサイドハーフの香川だった。チャンスメイクと守備に加え、ゴールまで求めることに、そもそも無理があった。UAE戦の延長戦でも、仕掛けられる局面でそうしなかったのはもはや敵を振り切るだけのスタミナが残されていなかったからだろう。いずれにしても、香川にとってインサイドハーフは荷が重いポジションだった。
 
 なぜ香川を攻撃に専念させなかったのだろうか。実際、トップ下近くでプレーしたイラク戦の63分以降は精力的にゴール前でボールに絡み、持ち前のセンスを発揮していたというのに……。
 
 センターサークル付近で香川がボールを持っても、相手にしてみれば怖くなかっただろう。そこでパスを出されても、ドリブルでかわされてもゴールに直結する可能性はかなり低いのだから。まさに、宝の持ち腐れ。この背番号10の能力を最大限に引き出せなかったという意味で、アギーレ監督の采配には疑問符が付いた。

次ページ交代策は評価も、アギーレ監督には相応の責任がある。

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