【記者回顧録】無敵の闘莉王。一挙4ゴールを奪った驚愕の試合を覚えているか

2020年04月22日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

選手採点で迷いなく「8」をつけたのは…

神戸戦で4ゴールを決めた闘莉王。まさに驚異のゴールラッシュだった。

 「今日はひとりで6点取れたよ」

 2012年8月4日、試合後のミックスゾーンでヴィッセル神戸の大久保嘉人がそう話しかけた相手が、当時名古屋グランパスでプレーしていた田中マルクス闘莉王だった。

 名古屋がホームに神戸を迎えた試合、負傷中のケネディに代わって4-3-3システムのセンターフォワードに入った闘莉王は開始直後からエンジン全開。前半2分、右ウイングの小川佳純のクロスに豪快なヘッドで合わせると、2-0で迎えた38分、今度はインサイドハーフの藤本淳吾とのワンツーから右足で自身2点目を奪う。

 そして50分にゴール前の混戦からループ気味のシュートでハットトリックを決め、さらに88分にはもうひとりのインサイドハーフの田口泰士のお膳立てから冷静に左足でダメを押した(名古屋が5-1で勝利)。

 左右両足、頭とバリエーション豊かなフィニッシュワークで、一挙4ゴール。使われたポジションがFWだったとはいえ、本職がCBの選手が4ゴールを挙げる試合には滅多にお目にかかれない。だからこそ、このゲームは今でも強く記者の記憶に残っている。
 
 当時のサッカーダイジェストを振り返ると、20節の本誌MVPには闘莉王が選ばれている。そして、MVP欄では次のように評した。「持ち前のパワーと驚異の決定力で、一挙4ゴール。さらに確度の高いポストプレーで攻撃に厚みをもたらし、守備の局面でも懸命にチェイシングして相手の攻撃を遅らせる。この日はまさに"無敵"のCFとして100点満点の出来だった」と。

 ちなみに、採点は「8」(かなりの高採点)。これまでJリーグの試合、代表戦を何度も取材してきたなかで、迷いなく「8」をつけた選手はこの日の闘莉王以外に今までいない。

 名古屋の中心軸が改めて闘莉王だと思い知られた試合で、本人はこんなコメントを残している。

「自分を前線で使う監督の勇気に応えようと思っただけ。今日みたいにボールがたくさん入ってくるとやりやすいよね。ただ、俺はディフェンダーだよ(笑)」

 そう笑顔で応えていた闘莉王の表情もまた、記者の脳裏に強く焼きついている。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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