【アジアカップ】沈黙の3分に秘めた長友佑都の想い

2015年01月23日 寺野典子

重い口を開き、一気に語りつくした。

今大会を通じてメディアの前でほとんど口を開かない長友。そこには4年前とは異なる優勝への強い決意が感じられる。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

「すみません」
 
 そう言って、長友佑都が話し始めたのは、質問者の質問が終わってから、3分22秒後だった。準々決勝・UAE戦前日の公式会見に、アギーレ監督とともに出席した長友に投げかけられたのは、いくつもの要素が詰まった質問だった。
 
「ブラジル・ワールドカップでなにが足りなかったか? 今後の4年間をどうやらなければ世界基準になれないのか。それを踏まえて、アジアカップでどういうステップを踏みたいのか。明日のUAE戦も含めてどう考えているのか? 考えを聞かせて下さい」
 
 しばらく考えたのちに「僕個人のことですか?」と長友は質問者に問い、質問者は「長友選手のこと、チームのこと」と重ねた。
 
 そこからまた1分近くの沈黙が続くと、長友の印象について問われていたアギーレ監督が「じゃあ、先に僕が話しましょう」と場を持たせた。監督がスペイン語で話し、それを通訳が日本語、英語に訳す。その後にやっと長友が重い口を開き、約1分弱、一気に語りつくした。
 
「すみません。さっきの時間でいろいろ考えていましたけど、なかなかワールドカップの時の心境と、次のワールドカップへ向けての心境を語るのは本当に難しくて。今、そのことについて考えていて、言葉に発するためにはエネルギーが必要で、ここではちょっと勘弁してもらいたい。今、そのエネルギーを使うくらいなら、明日の試合のダッシュ1本にエネルギーを使いたいと思います。
 
 ただ、ひとつ言えることは、いかに本当にチームのために犠牲になれて、チームのために走れるかということが、今の自分の課題であって、目標です。その、本当に犠牲の精神や、チームのためにという気持ちが本気であるならば、本当に大事な時に、最高のパスが来たり、今までミスしていたところがミスではなくなったり、そういうものに繋がっていくかと思います。

 だから、明日の試合もチームのために走ります、はい」
 

次ページ語らないことで生まれる変化を探して――。

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