【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の弐 「慎重を勇猛に代えて」

2015年01月22日 小宮良之

日本では、“おまえは良い選手なんだぞ”と理解させるのに苦労した。

昨年11月からスペイン2部で指揮を執るポポヴィッチ監督は、日本人のメンタルの弱さについて言及した。ただし、その指摘にあったような慎重さは、勇猛さにも成り変わる日本人の強みでもあるのだ。(C) Getty Images

 2014年12月。大分、町田、FC東京、C大阪などを率いていたランコ・ポポヴィッチ監督が、スペイン最多発行部数を誇る有力スポーツ紙「MARCA」のインタビューに答えている。リーガ・エスパニョーラ2部、レアル・サラゴサの指揮を執るようになったポポヴィッチは、そのなかで日本サッカーについての印象も語った。
 
「日本では、"おまえは良い選手なんだぞ"と理解させるのに苦労したよ。ヨーロッパの選手のような自信がない。いつも自分の実力に疑いを持ち、他者よりも下だと思ってしまっているからね」
 
 ポポヴィッチは以下のような例も出して"日本人選手論"を続けた。
 
「大分で指揮を執っていた時のことだ。ひとりのCB(深谷友基、現・岐阜)が『私たちにはこのプレースタイルを実践するだけの技術がありません』と進言してきたことがあってね。私はこう返した。『私は君よりもテクニックのない選手だった。しかし、チャンピオンズ・リーグでロナウドやラウールとも堂々と戦っている。君は私よりもずっと良いプレーができるだろう』と。(自分の力を)信じること、それがサッカーにおいては鍵となる。『どうして日本は女子が世界一になったのに、男子はなれないのか』という問いもあったが、私は明確に答えたよ。『彼女たちはガッツがあって、彼らにはないんだ』とね」
 
 日本人選手の謙虚さ、欧米人から見た場合の弱気は、これまでも指摘されてきたメンタル面の問題だろう。例えば、ゴール前でシュートよりも確率の高い味方を探してパスをする……そうした消極的行動パターンは、欧州や南米ではあまり歓迎されない。"知性を働かせた"というよりも、"責任を回避した"と捉えられてしまう。最悪の場合は、臆病者の誹りを免れない。
 
 慎重で責任をとることに積極的ではない日本人には、目的を遂行するための迷いが見えてしまう。それは集団戦において、弱点となり得る。改善すべき点であろう。

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